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会津若松市のデジタル関連企業の誘致拠点が開設、アクセンチュアは250人規模で入居

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年4月23日

会津若松市は2019年4月22日、同市のスマートシティプロジェクトの一環として、デジタル関連企業の誘致を図る新拠点「スマートシティAiCT(アイクト)」を開設した。同拠点開設を含め会津若松市の政策立案を支援してきたアクセンチュアは、AiCTに250人規模で入居する。

 2019年4月22日にオープンした「スマートシティAiCT(アイクト)」は、会津若松市が「ICTオフィス環境整備事業」として開設したデジタル関連企業を誘致するためのオフィスビル(写真1)。同市のシンボルである鶴ヶ城に続く主要道路に面し、企業の入居スペースのほかに、コワーキングスペースや、入居者や市民らが交流するための別棟も備える。

写真1:2019年4月22日にオープンした「スマートシティAiCT(アイクト)」

 市が直接、運営・管理するのではなく、土地・建物の所有者が事業会社にスペースを貸し出す「ホルダー企業」制を採っている。土地は市が所有し、建物はホルダー企業であるAiYUMU(あゆむ)と市の共有財にしたうえで、AiYUMUに運用を委託している。公募で決まった「AiCT」は「会津ICT」の略ではあるが、その「A」には「AIZU(会津)」「AI(人工知能)」「Advance(前進、進出)」の意味が込められているという。

 開所式で会津若松市の室井 照平 市長は、「人の流れを変え雇用を生み出すと同時に、若者の地元密着を実現するためのICT企業を誘致する。AiCTは、そのための働く場所になる。地方モデルの実証と実装に向けた人材交流と最新技術の利用促進に期待する」と話した(写真2)。

写真2:「スマートシティAiCT(アイクト)」の開所式には大勢が参列した

 来賓として訪れた情報通信技術(IT)政策担当および内閣府特命担当大臣の平井 卓也 氏は、会津若松のスマートシティプロジェクトについて、次にように評価した。

 「産官学に金労言(金融機関、労働団体、言論界)が加わり、そこにコンセンサスが得られたことが成功の理由だ。デジタル変革では、テクノロジーをどう社会に実装しているかが問われている。今日をスタートとし会津若松の知見を結集し、福島県、日本全体、そして世界への発信力を高めてほしい。現在、第6期科学技術基本法を作成しているが、第5期で提唱した『Society 5.0』の概念を具体的に見えるようにする責任が会津若松市にはある」

首都圏にある企業の移転による定住者増も期待

 AiCTには、デジタル関連企業を誘致し、会津若松市のスマートシティプロジェクトへの参画を期待すると同時に、そこで働く技術者などが移住し、定住者数を増やすという目的もある。

 2019年4月時点ですでに、アクセンチュアやSAPジャパン、日本マイクロソフト、フィリップス・ジャパンといった外資系企業の日本法人や、TIS、NEC、三菱商事、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどの日本企業が入居を決めている。

 なかでもAiCTの1階すべてを借りるのがアクセンチュア。2011年8月から会津若松市に開設していた「アクセンチュア・イノベーションセンター福島」を移転し、規模を拡張した。250人規模で技術者などが常駐する(写真3)。

写真3:「アクセンチュア・イノベーションセンター福島」のオフィス風景。手前は掘りごたつ式のミーティングスペース

 アクセンチュアは、東京にイノベーション創出拠点の「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」やシステム開発拠点の「東京ソリューションセンター」を置いている。

 デジタル化の取り組みについては「イノベーション・ハブ東京では経営者を含め新たなコンセプトを創出するが、その実証フィールドが必要になる。そこをイノベーションセンター福島が担う」と江川 昌史 社長は説明する。

 当面、250人は、東京ソリューションセンター所属エンジニアによる長期出張が中心になるが、「会津大学や福島大学などの卒業生を雇用したりする中で、会津若松市に定住する人材数が増えてくると期待する」(江川社長)という。

 なおアクセンチュアは、会津若松市で実証・実装したスマートシティのための基盤システムを汎用化し、他地域への展開を図っている。他地域展開では先に、三菱UFJリサーチ&コンサルティングと協業し、地方自治体などがデジタル化を推進するための人材/体制作りの支援も開始した。同基盤は奈良県橿原市が2019年4月から本格運用を始めている。