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パナソニックとトヨタがスマートシティ事業の合弁会社、両社の住宅ホーム事業を統合しモビリティと暮らしの融合を図る

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年5月9日

パナソニックとトヨタ自動車は2019年5月9日、スマートシティ事業に取り組む合弁会社設立に向けた契約を締結したと発表した。新会社の傘下に、パナソニックホームズやトヨタホームなど両社の住宅事業会社を統合もする。パナソニックが進める「くらしアップデート」とトヨタのモビリティサービスの融合を図り、街全体を対象にした新事業を打ち出したい考えだ。

 パナソニックとトヨタ自動車が設立する新会社の名称は、プライム ライフ テクノロジーズ。2020年1月7日に設立する予定で、社長にはパナソニックの専務執行役員 ライフソリューションズ社社長の北野 亮 氏が就く。出資比率はパナソニックとトヨタで同一とする。ただし、街づくり事業において覚書を締結している三井物産とも協議を進めており、三井物産も出資する可能性がある。

 新会社設立の背景には、住宅分野や都市開発の分野に米Googleや米Appleなどのデジタル企業が参入してきていることへの危機感があるようだ。新会社では、家電や住宅設備などのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)化や、自動車業界でのCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)の加速、移動手段としてのMaaS(Mobility as a Service)の進展などを組み合わせながら、スマートシティの開発事業に取り組む計画だ。

 新会社設立に際しパナソニックの津賀 一宏社長は「顧客や地域にとって価値ある街づくりには、ハードウェアに加え、テクノロジーが支えるサービスの充実が一層重要になってくる。モビリティ領域をリードするトヨタと、人の「くらし」に寄り添い続けてきたパナソニックの強みを掛け合わせ、新たな価値の提供に取り組んでいく」としている。

 トヨタの豊田 章男 社長は、「CASEの進展によって人々の暮らしを支える、すべてのモノ、サービスが情報でつながり、クルマを含めた町全体、社会全体という大きな視野で考える“コネクティッド・シティ”の発想が必要になる。クルマやコネクティッド事業を持つトヨタと、家電や電池、IoT事業を持つパナソニック両社の強みを持ち寄り、競争力を高めながらベターベターの精神で、新たな生活スタイルの提供にチャレンジしていきたい」とする。

 スマートシティ関連事業として、パナソニックは神奈川県の藤沢市と横浜市綱島において、「サスティナブル・スマートタウン(SST)」事業を展開してきた。スマートホームに向けたIoT家電の開発なども進めている。

 一方のトヨタは、EV(電気自動車)と家庭の蓄電池を結んだり、小型モビリティと公共交通機関を連携したりといった実証実験のほか、コネクティッドカーを対象にした「MSPF(モビリティサービス・プラットフォーム)」を構築。2019年からはソフトバンクとの合弁会社MONET TechnologiesによるMaaS事業の地方展開にも乗り出している。

 両社は、都市開発においては今後、モビリティや通信などのテクノロジーの発展、消費者の価値の変化などから、街の競争力の源泉が「立地」から「生活を支えるサービスインフラの充実度」に変化していく可能性があると見ている。新会社は、SSTにおけるMaaSの実証実験などのほか、新規の都市開発や、海外市場への展開に乗り出すとみられる。

住宅事業は新会社の傘下に統合

 新会社の設立に合わせて、両社の住宅事業を統合する(図1)。今後、市場の競争激化を想定した動きで、事業基盤の強化を図るのが狙いだ。

図1:新会社の傘下に両社の住宅事業を統合する

 統合するのは、パナソニック側ではパナソニックホームズ、パナソニック建設エンジニアリング、松村組の3社を、トヨタ側ではトヨタホームとミサワホームの2社を予定する。これら住宅事業の統合により、戸建住宅の供給戸数は約1万7000戸と国内トップクラスになり、事業規模拡大による経営体質の強化と収益性の向上を目指すとしている。