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持続可能な快適さへシフトするヨーロッパのデジタルトレンド(前編)

ベルリンの「IFA 2019」に見るSociety 5.0時代のスマートライフ

野々下 裕子(ITジャーナリスト)
2019年11月19日

スマート化した生活家電と関連サービスの連携に動く

 生活家電全体ではスマート化が進み、数年前はアイデアレベルだったものが、いよいよ販売段階に入ってきた。各社とも、冷蔵庫や洗濯機、調理機器、美容家電などをスマートフォン用アプリケーションと連動させるだけでなく、利用履歴から適切な使い方を提案したり関連するサービスと連携させたりといった取り組みに力を入れている。

 ハイアールは、イタリアの家電メーカーCandyを買収しヨーロッパ市場の開拓に力を入れている。今回、「simply-Fi」という専用アプリで家電の機能をサポートする技術を開発し、今後市場投入する製品に搭載していくと発表した。

 たとえば全自動洗濯機では、洗濯物をスマホのカメラで撮影すれば洗い方が設定できたり、ボタン型発注デバイス「Amazon dash」と連動させて洗剤や柔軟剤を注文できたりする(写真3)。ワインクーラーでは、ワインのラベルを読み取れば適切な温度で管理し、そのワインに合わせた料理も提案する。

写真3:洗濯物をカメラで撮影するだけで設定ができるなどスマート化のレベルは高まっている

スマートホーム用規格の開発競争が激化

 スマート家電の広がりや家全体のスマートホーム化が進むのに合わせ、それらをコントロールする規格やプラットフォームの開発に各社が取り組んでおり、乱立状態にある。GoogleやAmazon、Apple以外に、さまざまなプラットフォームが展示され、ヨーロッパ市場の獲得に向けた競争の激化が見て取れる。

 独Home Conncetの「Home Connect」が、その1つ。スマート家電をアプリや音声で制御するためのプラットフォームである。AmazonのAlexaやIFTTTといった各種サービスと連携し、レシピの提供から、宅配サービス、家庭でのエネルギー使用を管理するHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)までを対象にしたエコシステムの構築を目指している。

 アルチェリッキの「Home Whiz」は、モバイルアプリからのスマートホームや家電の制御に重点を置いている(写真4)。家電は今後、リモコンではなくスマホやタブレットで操作するようになり、それらで使える音声アシスタントを活用できる点をアピールしている。

写真4:「Home Whiz」はアプリを使った家電コントロールに重点を置く

 スマートホームと並行して、住宅やオフィスなど建築物そのものをスマート化する動きもある。そのための標準規格化も複数が進展している。

 たとえば「KNX」は、ヨーロッパ発の国際標準(写真5)。照明や空調などの機器を制御するアプリケーションを開発するための規格だ。ヨーロッパを中心に多くの190カ国470のメンバーが参加し、中国でも対応が進む。パートナー企業を増やすために、日本を含む世界各地でトレーニングやイベントを実施している。

写真5:ヨーロッパを中心に国際標準化を進める「KNX」

 ベルリン市で進むFuture 「Living Berlin」プロジェクトでは、スマートシティという単位での規格作りが始まっている。ビジネスとテクノロジーを支援する政府組織「Berlin Partner」を中心に、不動産や建築、モビリティ、エレクトロニクスなどの企業がパートナーとして参加する。

 Future Living Berlinでは、再生可能エネルギー利用したスマートホームや、住民全体で車をシェアするといったアイデアを採用し、それらを管理するスマートホームの規格やシステムをPanasonicとdigitalSTROMが共同で開発しており、2020年1月から実際の入居が始まる予定だ。

 スマートシティに関しては、モビリティをテーマにした併催イベント「Shift Automotive」でも、興味深い話題が発表されている。後編では、Shift Automotiveの内容を紹介する。