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中堅・中小企業のDX、東商、山口FG、リンガーハットの取り組みと日本マイクロソフトの支援策強化

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2019年12月24日

DXへの取り組み格差を解消する

 これら3社とパートナーシップを組む日本マイクロソフトは、中堅・中小企業のDX推進に力を入れる。注力分野としては、(1)人材不足に対応し生産性を高める「働き方改革」、(2)ビジネス課題を解決するデータ活用の変革、(3)スタートアップ企業の支援の3つを挙げる。

 同社の中堅・中小企業向けビジネスを統括する業務執行役員 コーポレートクラウド営業統括本部 統括本部長の三上 智子 氏は、こう力説する(写真4)。

 「DXというと大手企業が大きな投資をして実行するものだと思いがちだ。だが当社の企業理念は『地球上のすべての個人と組織が、より多くのことを達成できるようにする』であり、DXに取り残される企業があってはならない。日本には380万の中堅・中小企業があるとされるが、DXへの取り組みに格差が開きつつある。この解消に向けて取り組む」

写真4:日本マイクロソフト業務執行役員 コーポレートクラウド営業統括本部 統括本部長の三上 智子 氏

 三上氏は中堅・中小企業担当に就任後、延べ100社、300人近くと面談してきたという。「地域で圧倒的な支持を得ている企業や、小さいが世界で通用する技術を持つ企業、独自のアイデアで世界に羽ばたくビジネスを目指すベンチャーなど、さまざまな分野で特徴あるビジネスを展開している企業がいる。彼らが業績をさらに伸ばせれば、日本はもっと元気になると確信した」とも話す。

 働き方改革では、リモートワークの普及に取り組む。特に2020年は東京オリンピック/パラリンピックの開催により都内の移動が難しくなることが指摘されている。そのため東商と組み、東京からしっかりとリモートワークを進めたいという。三上氏は、「中堅・中小企業では『リモートワークはセキュリティが怖い』という人が多い。『デジタルがわからない』『どこから始めたらいいかわからない』という声を含め、より親身に支援していく必要がある」と話す。

 生産性やデータ活用に向けて日本マイクロソフトが推すのがOffice365である。三上氏は2019年10月に中堅・中小企業担当に就くまでモダンワークプレイス(Microsoft365製品関連)担当だった。

 東商の小林氏は、「中小企業や個人事業主にも馴染みのあるWordやExcelをクラウドで活用できるOffice365は、中小企業の困りごとを解決する有効なツールだ。中小企業の生産性向上の足がかりになる」と評する。

 しかし、日経225採用銘柄の92%がマイクロソフトの何らかのクラウド製品を利用しているのに対し、中堅・中小企業のOffice365の利用率は46%にとどまっている。「クラウド利用について、大手と中堅・中小では大きなギャップがある。地域的にも、東京・大阪など都市部は比較的高いが、地方は大きく遅れている」(三上氏)。2020年1月のWindows7のサポート終了に対しても、「啓蒙は続けているが認知度は大企業の95%に対し中堅・中小企業は81%とやや低い」(同)という。

2020年初から大きな支援策の投入を予定

 日本マイクロソフトは、中堅・中小企業のクラウド利用率を現在の46%から2020年中に50%にまで高めるのを目標にする。「50%を超えればメインストリームに近づいていく」と考えるためだ。そこに向けては、セキュリティ診断や、コラボレーションツールTeamsのワークショップ、マイクロソフトの社員自身がOffice365をどう使っているかの紹介といった施策を打つ。

 「利用率4%向上」は一見小さな目標に見えるが、380万社の4%なのでじっ巣では約15万社に相当する。1年で15万社にOffice365を新たに利用してもらうのは上記施策だけでは厳しいのではないだろうか。

 その問に対し三上氏は「もちろん高い目標であることは認識している。だが2020年1月から大々的なキャンペーンを開始する予定だ。それを起爆剤に利用者数を伸ばしたい」と答えた。

 キャンペーン内容は明かしてくれなかったが、東商に対しては、3カ月の無料優待版を会員限定で提供している。クラウドサービスの導入促進策とするならば、東商の提携のような期間限定の無料版か、アカウント数を限定した低価格版かのどちらかではないかと記者は推測する。

 なおスタートアップの支援策としては、クラウドの無償提供を含む技術支援に加え、営業・マーケティング面でもマイクロソフトのリソースを投入するとする。その一環として、大手企業とのマッチングを強化する「The Connect」という取り組みを2019年12月16日に開始した。「2020年中に100社を支援するのが目標」(三上氏)である。