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兵庫県と神戸市ら、グローバルで闘える関西圏発のイノベーションを支援へ

野々下 裕子(ITジャーナリスト)
2019年12月26日

兵庫県と神戸市、神戸商工会議所は2019年12月25日、行政と大学、経済団体などが一体になり、スタートアップ企業を生み育てる環境を整備・支援するためのコンソーシアムを設立した。兵庫県と神戸市のそれぞれが持つリソースやポテンシャルを最大限活用し、世界で活躍するスタートアップ企業を輩出するためのエコシステムを立ち上げるのが目的である。

 兵庫県と神戸市、神戸商工会議所が設立したのは「ひょうご神戸スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」。同コンソーシアムには、神戸を拠点とする経済団体や、大学、金融機関、産業振興財団などが参加する。

 さらに、360超の医療関係機関が集まるバイオクラスターを形成する神戸医療都市産業推進機構や、デベロッパーの阪急阪神不動産、神戸で活動するキーパーソンたちや、神戸市と協力関係にある米シリコンバレーの500 Startupsも加わる。

写真1:神戸商工会議所で2019年12月25日に開かれた「ひょうご神戸スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」の設立総会の様子

関西一丸でスタートアップのエコシステムを形成

 同コンソーシアムの目標は、内閣府が2020年3月、「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」に基づき、全国で2〜3カ所を選定する予定の「グローバル拠点都市」に選ばれること。コンソーシアム主体で「エコシステム形成計画」を策定し、公募に応募する。

 総会に出席した兵庫県の荒木 一聡 副知事は「阪神淡路大震災を克服し復興を果たした神戸をグローバル時代にふさわしい都市にするため、コンソーシアムを通じて連携を図りたい」と述べた(写真2)。

 神戸市の久元 喜造 市長も「世界経済の中で活躍できる優れた人材が集まり、『神戸でビジネスを展開したい』というトレンドを作るには、閉じられたエコシステムではいけない。関西全体で形成しリーダシップを取るためにも、民間や大学を含む連携を進化させたい」とし、より多くの人たちの参画を呼びかける。

 神戸商工会議所の家次 恒 会頭は、「関西はもともと起業文化が土壌にある。後は、どう成功させるかだけだ。新たなビジネスを立ち上げる環境づくりとコラボレーションで、起業をどれだけ掘り起こせるかが我々の使命になる」とした。

写真2:総会で決意表明する兵庫県の荒木 一聡 副知事(左)、神戸市の久元 喜造 市長(中)、神戸商工会議所の家次 恒 会頭(右)

 支援機関代表として発言した日本ベンチャーキャピタルの藤本 良一 氏は、コンソーシアムへの期待として「グローバル」と「ディープテック」を挙げる。「ディープテックに特化した企業は関西に多く、イノベーションの中心になり得る。世界的に見ても国の経済の中心とイノベーションの中心は必ずしも一致していない。日本のスタートアップ支援は中国やインドにも遅れているだけに、覚悟と自信、行動力を持って本コンソーシアムを進めていきたい」と話す。

 キーパーソン代表のCode for Japan代表理事の関 治之 氏は「神戸は『スタートアップがアイデアを実践できるフィールドを提供する』という世界でも貴重な自治体の1つ。市役所職員自身が課題にチャレンジする先進的な取り組みでも世界から注目されている。そこにチャンスがあり、コンソーシアムを通じて支援がつながることに期待している」と語った。

 神戸大学の小田 啓二 副学長は、「大学でもアントレプレナーシップのプログラムを立ち上げ、起業マインドがある学生が育ってきたところだ。産学連携の実証の場としてVスクールを活用することも検討している。他の大学とも一緒にイノベーションを支援し、起業を盛り上げていきたい」とした。