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Scrumの発案者が語る、組織のアジャイル化で失敗しない方法

「Scrum Interaction 2019」でのジェフ・サザーランド博士の基調講演

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2020年1月15日

アジャイル開発の手法として登場したScrumは今、チームマネジメントの有力手法として着目されている。Scrumの発案者であるジェフ・サザーランド博士が「Scrum Interaction 2019」(主催:Scrum Inc. Japan、2019年11月8日)の基調講演に登壇し、ビジネスアジリティ(俊敏性)を高めるための取り組みについて講演した。大手企業がScrumを実施するための新手法「Scrum@Scale」について言及した。

 「アジャイルプロジェクトの47%が失敗している」−−。Scrumの発案者で、その導入支援やコーチなど人材育成に取り組むScrum Inc.の創業者であるジェフ・サザーランド博士は現状をこう指摘する(写真1)。

写真1:Scrumの発案者でありScrum Inc.の創業者であるジェフ・サザーランド博士

 同氏によれば、Scrumの要素を確実に実装できているのは全体の3分の1に留まる。残りの3分の1はうまく実装ができておらず、3分の1は何も実装していない。サザーランド博士は、「これではタイヤの両輪がパンクした車を運転しているようなもので、デジタルトランスフォーメーション(DX)には失敗する。Scrumを正しく実装することが重要だ」と警鐘を鳴らす。

アジャイル型プロジェクトの成功率は従来型の倍

 2013年から2017年に実施された5万件のプロジェクトを対象にした米Standish Groupの調査では、従来型プロジェクトの成功率は26%であるのに対し、アジャイル型プロジェクトの成功率は42%と倍近くあった。ただ、正しくScrumを実施しなかったプロジェクトが50%もあり、そこでは期間や予算の超過などが発生していた。

 サザーランド博士がScrumの考え方による最初のプロジェクトに成功したのは1995年のこと。その経験を基にScrumの定義やガイドを作成した。そして今、同氏が定着を図ろうとしているのが、Scrumを大企業で機能させるための方法論「Scrum@Scale」である(写真2)。

写真2:大企業での利用を考慮した「Scrum@Scale」の概念

 Scrum@Scaleは、「ソフトウェア開発部門だけでなく、企業のさまざまな部門が、予測可能性や俊敏性をもってビジネス成果を生み出すための手法」(サザーランド博士)。そこでは「スクラムマスターがソフトウェア開発のサイクルを回すのと同じように、プロダクトオーナーがビジネスの改善サイクルを回す」(同)

 プロダクトオーナーに求められるのがリーダーシップだ。「時にはチームの人員を減らすという決定を下す必要もある。スクラムを組織中に浸透させるためには、チームを変え、スペースを変え、パフォーマンス評価の方法を変える必要があるだけに、人事がScrumの成功の肝になる」とサザーランド博士は強調する。

 チームの構成を柔軟に変更できるよう、Scrum@Scaleは、組織の規模を問わない「スケールフリーなアーキテクチャー」(同)になっている。「複数のチームを組織化し、意思決定の構造化を図ることでリニアにスケールすることを可能にしている」(同)という(写真3)。

写真3:組織の規模を問わないようScrum@Scaleは「スケールフリーなアーキテクチャー」を採用