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小売業のデジタル化の進展で実店舗への期待が高まる

米ゼブラの『小売業界のテクノロジー改革に関するグローバル調査』から

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年4月10日

「e コマースがどれだけ浸透しても、消費者は実店舗での店頭スタッフとの1対1のコミュニケーションを求めている。その支援にテクノロジーを活用することが、これからの小売業の生き残りのカギになる」――。こんな調査結果を商品管理システムなどを開発・販売する米ゼブラ・テクノロジーズが発表した。実店舗に対し、どのような期待が高まっているのだろうか。

 米ゼブラ・テクノロジーズは、小売りのほか運輸、製造などに対し商品管理システムやエッジデバイスを開発・販売する会社。社名の「ゼブラ」は、商品管理に使うバーコードの縞模様に由来する。1969年にバーコードプリンタの専業メーカーとして創業。現在はバーコードスキャナーやRFIDソリューション、自動認識システムなどを手がけている。2019年の売上高は44億ドル(約4800億円)で、日本では1998年から事業展開している。

 小売業や製造業など“現場”を持つ多くの企業を顧客に持つ同社は毎年、世界中の小売業の幹部や販売員、および一般消費者を対象に『小売業界のテクノロジー改革に関するグローバル調査』を実施してきた。12回目となる今回は約6300人を対象に2019年8月〜9月に聞き取り調査した。

若年層ほど実店舗にネット以上の体験を求める

 消費者の購買動向が実店舗からネットへと急速に変化してきたなかで、小売業界は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)をはじめ現場のデータを収集・分析することで業務の効率化や購買体験の向上に取り組んでいる。今回の調査では、買い物客の満足度は前年度より高くなっており、企業努力が反映された結果だった(図1)。

図1:買い物客の満足度は実店舗、オンラインともに高まっている(出所:米ゼブラ・テクノロジーズ)

 しかしゼブラ・テクノロジーズ・ジャパンの古川 正知 社長は「年齢別に消費者行動が異なる点に注目したい」と指摘する。なかでも「ミレニアル世代(20代から30代)」と、それ以上の「ジェネレーションZ世代(40代から50代半ば)」および「ベビーブーム世代(50代後半以上)」での行動の差だ。

 図2はショッピングに対する満足度を示したもの。実店舗、オンラインをショッピングへの満足度が高いのはミレニアム世代であり、ジェネレーションX、ベビーブームと世代が上がるにつれ、いずれの満足度も低下する。

図2:ショッピングへの期待はミレニアム世代が最も高い(出所:米ゼブラ・テクノロジーズ)

 さらにミレニアム世代の67%が、「実店舗があるオンライン小売業者での購入」を希望している(図)3)。

図3:実店舗があるオンライン⼩売業者での購⼊を希望する顧客の世代別比率(出所:米ゼブラ・テクノロジーズ)

 実店舗を抱える多くの小売業には朗報だろう。ただし、そこには「店内には新たなテクノロジーが導入され、それにより店頭スタッフがレベルの高い接客を提供できること」(古川氏)が前提になる。

 実店舗での経験においては「最新テクノロジーを⽤いた店員の接客によって、ショッピング体験が改善した」とする回答が59%、「情報検索は⾃分でするよりも、最新テクノロジーを活⽤する店員が⾏う⽅が望ましい」とする回答も57%ある。その一方で「店員よりも⾃分の⽅が簡単に情報を⼊⼿できる」とする回答が52%に上る(図4)。

図4:実店舗における買い物客の思考(出所:米ゼブラ・テクノロジーズ)

 つまり顧客は「実はオンラインだけ実店舗だけということはない。オンラインで調べた商品を実店舗で確認して購入し、その場で持ち帰るといった両者のメリットを組み合わせて利用している」(古川氏)わけだ。