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新型コロナ対策で規制緩和されたオンライン診療、先行サービス会社MICINが見据える次の課題
curonとしては3つの方針を固めたという。1つは、オンライン診療ができるだけ活用されるよう医療機関のサポートを強化すること。自社アプリのサービス改善はもちろん、電話や汎用サービスの活用も含めて支援する。
2つ目は、新しい制度に準拠するノウハウの提供。そして3つ目が、オンライン診療の実例をさらに蓄積し、それをエビデンスとして関係機関と共有することだ。
具体的な取り組みとして、初診オンライン診療に関する医療機関向けユーザーガイドを作成し公開した。初診オンライン診療は、すべての医療機関が初めて取り組むものだけに、その準備や運用モデルを提供することが医療機関の支援になるとの考えだ。
別の取り組みとして、新型コロナウイルス感染で中断してしまっている新薬の治験を、オンライン診療の仕組みを使って実施するサービスを開始した。治験対象者が通院しなくても、新薬の効果などの報告を受け治験が進められる仕組みで、治験サービス大手のシミックと共同で開発した(図3)。
オンライン診療と薬局のオンライン化は不可分
さらにオンライン診療の普及には、「薬局のオンライン化も不可欠だ」(原氏)という。考えてみれば当たり前だが、診察だけがオンラインで受けられても、薬局に薬をもらいに行かなければならないのでは意味がない。
MICINでは以前から薬局と提携し、処方箋を医療機関から薬局にFAXで送る仕組みを構築してきた。ただ薬の配送やオンライン決済など、薬局側のオンライン運用を支援する仕組みはなかった。そもそも薬局には、「服薬指導」といって薬を患者に渡す際に、薬剤師が口頭で薬の内容を説明することが義務づけられていおり、対面での説明を前提にサービスを開発してきた。
今回、オンライン診療の制度変更に併せ、非対面での服薬指導が認められた。そのためMICINは、薬局向けサービス「curonお薬サポート」を3カ月ほどで開発しリリースした(図4)。今後は、薬局が、医療機関からFAXで受診した処方箋を元に、患者に電話で服薬指導をし、薬は配送、クレジットカードで決済するまでを1つのアプリでカバーできるようにする計画だ。
服薬指導は現時点では電話によるものだが、これをオンラインで実行するためのバージョンアップを計画している。
原氏は「curonを利用する、ある医療機関がオンライン診療を“見えないマスク”と表現するように、感染拡大防止に重要なツールだという認識を広めたい。医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進め、将来、新たな感染症が発生しても対処できるインフラとして機能させたい」と展望を語る。
curonの開発・運用環境はAWS
そのcuronは、クラウドサービス「AWS(Amazon Web Services)上で開発・運用されている。原氏はAWSを利用する理由を次のように話す。
「ベンチャー企業がAWSを利用するメリットは、スピードとスケールの両立にある。多くのマネージドサービスが提供され、必要な機能を容易に実現できる。新型コロナウイルス対応として、新機能を相次いでリリースできているのもそのためだ。同時に、利用者数が急増しているが、アーキテクチャーを変更することなく対応できている」
AWSも医療分野では不可欠なセキュリティとコンプライアンスを最優先事項に、同分野への取り組みを強化している。
AWSジャパン インダストリー事業開発部シニア事業開発マネージャーの佐近 康隆 氏は、「日本では、厚生労働省・経済産業省・総務省がまとめた医療情報基盤の構築運用ガイドラインをAWS上で実現するための利用リファレンスをパートナー企業とともに開発し2019年に開示した。2020年に出る予定のガイドラインの改訂版にも迅速に対応する予定だ」と話す。