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新型コロナ対策で規制緩和されたオンライン診療、先行サービス会社MICINが見据える次の課題
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け政府は2020年2月、初診からのオンライン診療を容認した。これを受け、オンライン診療に踏み切る医療機関が急増している。4年前からオンライン診療サービスを提供してきたベンチャー企業、MICINの代表取締役CEOである原 聖吾 氏が、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)が2020年5月21日に開いたヘルスケア導入事例の報道向け説明会に登壇し、オンライン診療の現状と課題を語った。
新型コロナウイルスにより、慢性疾患を持つ患者や幼い子供を持つ家族らが必要な時に通院できない状況が続いている。医療体制継続の観点からも、感染者以外の来院は、できる限り減らすことが求められていることもある。
その対策として期待が高まるのがオンライン診療だ。政府も2020年2月に、初診からのオンライン診療を認め、オンラインの診療報酬を暫定的に是正するという大幅な規制緩和を打ち出した。
これまで日本のオンライン診療は、離島や僻地への遠隔医療という認識が長く続いていた。一般の地域医療にも利用できるように制度が変更されたのは5年ほど前のことで、その普及は決して早くはなかった。
新型コロナで診療サービスの登録者数が10倍に
そのため、2016年からオンライン診療サービスを医療機関と患者に提供してきたMICIN(マイシン)は、創業4年のベンチャー企業ながら、同分野の“老舗”とも呼ばれる。すでに3500以上の医療機関が利用し、導入数では日本最大規模になっている。
MICINの創業者でCEOの原 聖吾 氏は、「自らの医師経験や医療行政に関わってきたキャリアを生かし、患者も医師も使いやすいオンライン医療システムを開発してきた」という(写真1)。
MICINが提供するオンライン医療サービス「curon(クロン)」は、予約から問診、診察、請求、薬の配送までの5つのプロセスすべてをオンラインで実現する。医師にはWebのアプリケーションを、患者にはスマートフォン用アプリケーションを提供し、アプリ内蔵のビデオ会議システムで診察し、クレジットカードで決済する(図1)。
そのcuronも、新型コロナウイルスの拡大によって、サービス利用者が急増している。原氏は、「直近の登録者数は2020年1月の約10倍、医療機関の利用数も同時期に約4倍、問い合わせは10倍に増えた。対象疾患も、オンライン診療が活用されていた慢性疾患に加え、小児科や耳鼻科などからの問い合わせが急増している。登録医療機関は直近の約1カ月で倍増する勢いだ」と話す(図2)。
初診オンライン診療の運用には議論が続く
コロナ禍でオンライン診療の利用者が増えていることを基本的には前向きにとらえている原氏だが、一方で「オンライン診療をこれから安定的に普及させていくには、何が必要かを問い直している」ともいう。これまでの経験から、オンラインには向かない診療や、オンライン化により患者にリスクが発生する恐れがあるからだ。
今回、初めて容認された初診オンライン診療について、原氏は次のように語る。
「感触として、現時点で初診オンライン診療を採り入れている医療機関は全体の半分以下。技術的、機能的に大きく問題になる点は特にないと思っている。むしろ医療機関側の運用について議論が続いている。どういう疾患の患者は初診ではオンライン化できないのか、初診では何をみて患者とどうコミュニケーションを取るべきかなどについて、ていねいに進めていくことが重要だ」