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働く人の就業体験価値を高める「HXM」という考え方、SAPジャパンなどが推進

DIGITAL X 編集部
2020年6月11日

体験と人事データから従業員のリアルな感情を理解する

 HXMについてクアルトリクス日本代表の熊代 悟 氏は、「企業の考えと従業員の思いとの間にある“ギャップ”を埋めることが重要だ」と説明する(写真2)。「たとえば経営者の81%は、自社の従業員は知人にも自社で働くことを勧めるだろうと思っているが、実際に知人に『よい会社』と紹介する従業員は38%しかいない」(同)

写真2:クアルトリクス合同会社 カントリーマネージャー 熊代 悟 氏

 そのためクアルトリクスでは、社員に積極的にアンケートを採り、その結果を基に改善のアクションを起こせるようにする。この仕組みを日々の業務に定着さる。このとき、従業員体験に関するデータは、(1)従業員の属性や業務成績、能力に関する業務データである「O(Operation)データ」と、(2)従業員の感情、体験の「X(Experience)データ」の2種類に分けられるという。

 熊代氏は、「OデータにXデータを組み合わせることで、さらに深いインサイトを得られる。これまでの人事管理は、主にOデータの処理を高速化することで発展してきた」と説明する。

 逆にXデータだけでも、従業員の真のエンゲージメントは見えない。「仮にXデータで、従業員の8割が『ハッピーだ』と答えていても、経営者はそれで満足してはいけない。「ハッピーだ」と答えていない2割が、入社間もない若手に集中していれば離職の恐れがあるからだ。Oデータと組み合わせて満足度の実態を把握できれば、改善策を直ちに打てる」(熊代氏)ことになる。

従業員向けクラウドサービス9社と連携

 今回さらに、従業員体験を広くカバーするためのエコシステムが発表された。関連する業務アプリケーションをSAPとQualtricsに組み合わせ、従業員体験の向上を図る(図3)。

図3:HXMのエコシステム

 2020年5月時点の人材に関するパートナー企業は次の9社である。

・Kronos:従業員のシフト管理「Kronos」
・Slack Japan:社内チャット・コラボレーション「Slack」
・ServiceNow Japan:業務フローの自動化「ServiceNow」
・WalkMe:業務アプリの操作ガイド「WalkMe」
・ZENKIGEN:オンライン面接サービス「HARUTAKA」
・イノービア:人材スキル管理「SKILL NOTE」
・ヴァル研究所:経路検索サービス「駅すぱあと」
・オープンテキスト:ドキュメントの自動作成と管理「Opentext」
・ドキュサイン・ジャパン:電子署名「DocuSign」

 これらの組み合わせでは、たとえば、中途採用において次のようなシナリオが可能になるとする。

 (1)SAPSuccessFactorsで求人情報を掲出、(2)HARUTAKAでオンライン面接を実施、(3)Opentextで内定通知・社員情報を管理、(4)DocuSignで雇用契約に署名捺印するまでがオンラインで完結する。入社後は、交通費精算、人事総務業務管理、社内システムのガイド、社内コミュニケーション、入社プロセスのアンケートまでをオンラインで提供できる。

 管理職に対しても、従業員が保有するスキルの検索・評価、業務量の予測とシフト作成、チームエンゲージメントの管理などが可能になるとしている。

 稲垣氏は、「HXMによって、従業員はもちろん、管理する企業側も含めたすべての働く人をハッピーにすることが11社協業の目的だ」と話す。

 どこまでをオンライン/自動化するのか、そのためのどんな仕組みを使うかは別にしても、従業員との双方向の対話を元に就業体験の満足度を高めるというHXMの考え方は、ポストコロナの時代に重要になっていくだろう。