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働く人の就業体験価値を高める「HXM」という考え方、SAPジャパンなどが推進

DIGITAL X 編集部
2020年6月11日

従業員の就業体験をいかに高めるかへの関心が高まっている。従業員の満足度が、企業の顧客価値や持続性などを左右するとの認識が広がってきたからだ。そんななかSAPジャパンが、人材マネジメントの新コンセプト「HXM(ヒューマン・エクスペリエンス・マネジメント)」を2020年5月26日に発表した。HXMとは、どのような考え方なのか。

 「HXM(ヒューマン・エクスペリエンス・マネジメント)」は、従業員の業務上の体験価値(UX)を高め、従業員の声をもとに改善サイクルを続ける人材管理の概念である(図1)。労働人口の減少や、多様化する労働者・働き方を背景に労働環境が大きく変わるなかで、企業活動にかかわる人が優れたパフォーマンスを発揮できるようにする。

図1:「HXM」はSAPが提唱する人材管理の新たなコンセプト

 オンラインで開催された会見において、SAPジャパン バイスプレジデント人事・人財ソリューション事業本部本部長の稲垣 利明 氏は、HXMという新しい概念を提案する背景を次のように説明する(写真1)。

 「日本の労働環境は大きく変わろうとしている。労働人口は今後15年間で1000万人、率にして15%が減少する。加えて、働く人や働き方が多様化し、働くことへのモチベーションも画一的ではなくなってきている。このような難しい環境下で日本経済を活性化させるには、従業員1人ひとりが生き生きと働ける環境が必要だ」

写真1:SAPジャパン バイスプレジデント 人事・人財ソリューション事業本部 本部長 稲垣 利明 氏

 HXMにおいて、最も重要視することは、従業員の就業体験である。そのために従業員からのフィードバックを常に反映させながら、改善サイクルを回し続けることで、個々人に最適化した働き方や教育メニュー、福利厚生などを提供できるようにする。

 これまでの人事/人材管理では、企業が従業員に一方的に就業環境を提供し、従業員もまた、それを受け身で利用する形が一般的な姿だったのではないだろうか。

 改善サイクルを回すためにHXMでは、従業員からのフィードバックを得るためにアンケート機能を設けている。常に従業員の声を把握することで、人材マネジメントを一方通行にしないためだ。

 これまでなら、従業員への調査は年に1回〜数回あるかどうかといったところだが、HXMでは、入社前から在籍中、さらに退職時まで、就業期間中のライフサイクル全般に対し、どのように感じていたのかを把握し、企業理念との整合性を確認するといったことが可能になるという。

 HXMを実現するシステムは、人事システムに、文書管理やワークフロー管理、チャットシステムなどを組み合わせる。SAPの場合は、中心になるのは、クラウド人事システム「SAP SuccessFactors」と、同社が2019年に買収した従業員体験管理システム「Qualtrics EmployeeXM」(クアルトリクス製)である。

 SuccessFactorsは、欧州のGDPR(一般データ保護規則)など99カ国の個人情報管理および労務や税制に関する法令に対応するクラウド人事システム。グローバルで6700社、1億ユーザーが、日本でも350社、130万ユーザーが利用する。

 一方のQualtricsは、従業員の体験管理のほか、顧客、製品、ブランドを共通プラットフォームで管理できるサービスだ(図2)。SuccessFactorsとQualtrics EmployeeXMにより、「従業員に今、何が起きているかだけでなく、それがなぜ起こっているのかまで把握できる」(稲垣氏)という。

図2:クアルトリクスが提供する企業向け従業員体験価値のプラットフォーム