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新型コロナ対策で生きたシミュレーション技術、仏ダッソー・システムズが医療や建設に踏み出す理由

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年6月15日

病院建設や出社再開計画もシミュレーションで

 シミュレーション技術は、建設分野でも利用された。中国・武漢での雷神山医院の仮設病院建設プロジェクトが、その1例。「極めて短期間で病棟を建設すると同時に、感染を拡大させない対策を施す必要があった。建設途中での修正が許されないため、当社のデジタルツイン技術を使い、病院内部の空気の流れを繰り返しシミュレートし、ベストな室内レイアウトを確認した」(ゴドブ氏)

図2:中国・武漢での雷神山医院の仮設病院建設プロジェクトでのシミュレーションの例

 こうした活用方法は今後、ニューノーマル(新しい生活様式)時代の都市計画やインフラ設計にも用いられるとする。オフィスや空港、航空機内などにおける空調や、マスク/フェイスシールドの着用による汚染範囲の違い、人と人が対峙するときの飛沫の飛び方などをシミュレーションすることで、実際の対応策のシナリオを検証できるとする。

 COVID-19の収束に向けた、従業員を安全に出社させるための計画立案にもシミュレーションが生きる。ダッソー自身が、自社製品を用いて再開計画を練っている。同社は世界に185拠点を持ち、その大多数が一時閉鎖されているのが現状だ。

 オフィスの再開に備えダッソーはまず、全従業員にアンケートを実施し、「引き続き在宅を希望するか」や「後回しにできる業務は何か」などを聞いている。アンケート結果を含めて、自社のビジネスシミュレーションソフトウェア「DELMIA Quintiq」を用いて復帰計画を策定し、仏パリ郊外にある本社をはじめ、日本支社にも同計画を適用したとする。

図3:仏ダッソー自身のオフィス再開計画におけるシミュレーションの例

 DELMIA Quintiqは、ビジネス計画とスケジュール策定、人員・資材など必要なリソースのシミュレーションや運用管理などが可能なプロジェクト管理ツールである。

3D EXPERIENCE Platformのクラウド版でスタートアップを支援

 オフィス再開の準備が進む一方で、今後もテレワークと出社をローテーションしながら仕事を進めることを“常態”にする企業が増えるとの見方が有力だ。ただ研究・開発現場など、使用するシステムなどの問題から、どうしても出社しなければならない業務もある。

 そうした職場に対してダッソーは、3D EXPERIENCE Platformのクラウド版「3D EXPERIENCE on Cloud」の提供を開始した。製造業の設計業務や素材メーカーや創薬企業の研究者など、リモートワークが難しかった業務も、「オンラインでコラボレーションしながら研究が続けられる」(ゴドブ氏)とする。

 なかでも技術系スタートアップ企業への利用をうながしたい考えだ。条件を満たせば3D EXPERIENCE on Cloudを3年間、非常に安価に利用できる特別な支援策を用意するほか、同社の「3D EXPERIENCE Labo」チームと、スタートアップ企業の間でオープンコミュニティを立ち上げた。

 すでに一部協業が始まっている。たとえばインドのスタートアップ企業は、人工呼吸器を3D EXPERIENCE on Cloud上で開発し、「わずか8日で完成させた」(ゴドブ氏)という。

 ニューノーマルでは、業務の効率化やコスト削減はもとより、従業員のリモートワークやコラボレーションは、さらに拡大するとみられる。そこでは、ダッソーが強調するデジタルツインや高度なシミュレーションが、さまざまな分野で利用されるだろうし、同技術分野の競争も激しくなりそうだ(図)。

図4:ダッソーが指摘するポストコロナ時代に企業が取り組むべき項目