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歯列矯正にもデジタル技術、3Dスキャンやオンライン相談アプリを投入するインビザライン・ジャパン
診療計画を800万人のデータに基づきシミュレート
さらに、スキャンデータに基づきアライナーを製作する際には、矯正による歯の動きを予測しつつ診療計画を立てるために、これまでの治療で得た800万人分のビッグデータを基に開発した独自のシミュレーションツールを用意する。分析結果をネットワーク上で共有し、医師と歯科技工士が二人三脚で作業することで、より高い精度での治療計画の立案やアライナーの製作が可能になるという。
アライナーは、矯正による歯の移動に合わせて交換して治療を進めていく。従ってワイヤー矯正と同様に定期診療が欠かせない。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大により、日本でも外出への心理的抵抗が高まっている。
そのために投入するのが、「Invisalign Virtual Appointment」と「Invisalign Virtual Care」の2つのデジタルサービスだ。
前者は矯正治療の希望者と歯科医師とをビデオ会議サービス「Zoom」で、後者は治療中の患者と歯科医師とを独自のアプリケーションでそれぞれつなぐ。両者により、治療期間や代金などの相談から、診療予約、治療中の歯の痛みなどに対する医師のフォローまでをカバーする(図2)。
松本氏は「相談のためにクリニックに出向く必要もなければ、歯科医との適切なコミュニケーションにより通院頻度も削減できる」とする。両サービスは海外で先行投入してきたが、日本語版を2020年7月中にも開始する予定だ。
治療を支援する中核施設を横浜にオープン
ただ、マウスピース型での治療は現時点では、歯列矯正全体の2割を占めるにとどまっている。アライン・テクノロジーは、インビザラインのデジタルならではの付加価値を武器に、日本における潜在市場の掘り起こしに挑む。
その推進に向けた中核拠点として、横浜みなとみらい内に「The Yokohama Treatment Planning and Training Centre of Excellence(横浜治療計画トレーニングセンター・オブ・エクセレンス)」を開設する。これまでは、コスタリカ共和国内にある窓口から治療計画の策定を支援してきた。同施設では併せて、歯科医師向けのトレーニングなどを開催し、クリニックとのネットワーク拡大を図る。
賀久氏は、「文化的な違いから、日本では歯列矯正治療を受ける患者は少なく、その数は現時点で23万人ほど。欧米並みに普及すれば、その数は(3倍以上の)82万にまで増加すると見込まれる」と説明する。
国の医療費が削減傾向にある中、歯科診療医療は、そのあおりを大きく受けている治療の1つ。自由診療の歯列矯正は今後の収益源として注目を集める。施術法の差別化手段として、デジタル競争も加速していきそうだ。