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日本の「デジタル後進国」を明らかにした新型コロナ、ServiceNowが投入する職場復帰支援策の出番はいつに

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年6月25日

従業員の安全な職場復帰を支援する4アプリを投入

 ServiceNow Japan自身の新型コロナ対策としては、2020年3月12日からテレワークを実施。現在も継続している。この間に村瀬氏は、100人以上の日本企業のCxOとオンラインで面談を持ち、意見を交換したという。

 「未体験の事態に遭遇しつつも、多くの企業幹部が前向きな意見を持っていた。たとえば、『無理だと思っていた全社テレワークが、やってみたらできてしまった』とか『“IT後進国”だったことを認め、自らが陣頭指揮をとってDX推進を宣言した』という製造業の社長など、DXを進めようという決意表明が相次いだ」(村瀬氏)。

 オフィスの見直しや、IT部門の強化など組織体制の改革に意欲を見せる幹部も目立ったという。

 村瀬氏は「今、働き方改革を止めようとする経営者はいないだろう。プロセスを棚卸しし、必要なプロセスだけを業務フローに乗せ、デジタルの支援を受けながら従業員視点で日本固有のサービスを作り出す必要がある。これが“ニューノーマル”への近道になるはずだ」と力を込める。

 ニューノーマルに向けてServiceNowが投入したのが、従業員の職場復帰を安全に実行するためのアプリケーション群だ。従業員の職場復帰に際して、「企業が取り組むべきポイントは4つある」とServiceNow Japan マーケティング本部プロダクトマーケティング部部長 高橋 卓也 氏は説明する。

 1つは、従業員が戻りたいと考えているかと聞くこと。通勤経路やマスクの確保などに懸念がないかの確認が必要だ。次に、従業員が職場復帰するための統一基準を作ること。3つ目が、ニューノーマルの職場で新たに発生する業務、たとえば入室前の検温や手指の消毒などを、できる限り自動化すること。そして最後が、安全な職場環境を維持するための管理業務である。

 これらのポイントの実行を支援するため、ServiceNowは、次の4つのアプリケーションを開発しリリースした(図3)。

図3:ServiceNowが投入する従業員の職場復帰を支援する4つのアプリケーションとダッシュボード

「Employee Readiness Surveys」 :職場復帰への従業員の意向の確認と、復帰時の懸念などの意見を収集する。企業側は勤務スペースの計画などに利用できる。

「Employee Health Screening」 :職場に戻る従業員の検温状況などを確認し、企業のガイドラインに適合すれば「入室可能」などと表示する。マスクなどの要望を集めて管理する。企業は従業員の復帰状況を可視化して管理できる。

「Workplace PPE Inventory Management」 :マスクや防護服、消毒液などのPPE(Personal Protective Equipment:個人用防護具)」を企業は今後、常備する必要がある。PPEの在庫や手配状況などを管理する。

「Workplace Safety Management」 :3密を避けて安全なオフィス環境を維持管理するために、勤務シフトや会議室などワークプレイスの予約を管理する。会議と会議の間の清掃手配なども自動でスケジュールできる。

 これら4つのアプリは、個々に利用できる。複数を運用する際は1画面で管理するためのダッシュボードが用意されている。組織全体の職場復帰状況とオフィスの運用状況を確認できる。

デジタル化に手応え感じた企業ほど社員の職場復帰を急がず?

 通常、ServiceNowのアプリケーションは、「完成後に自社内の実業務に使用する『カスタマー・ゼロ』のプロセスを経てから市場投入される決まりになっている」(高橋氏)。だが今回は、ServiceNow自身も在宅勤務が継続しているため、自社では物理的に試せない状況にある。「カスタマー・ゼロ」を経ていない異例のリリースになっている。

 ただ、村瀬社長がリモートで話した100人の企業幹部の大半が、「従業員の職場復帰を急いではいない」と答えたという。リモートワークへの手応えと、従業員の感染リスクを考えると、しばらくは職場に従業員を戻さないと考える企業が多いようだ。

 皮肉なことだが、ServiceNowが社内規定を超えてまで早期投入したアプリケーション群が本格導入され、その効果が見えてくるのは、少し先になるのかもしれない。