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血中タンパク質から健康状態と疾病リスクを可視化するヘルスケア企業、NECソリューションイノベータが設立

野々下 裕子(ITジャーナリスト)
2020年7月17日

現在と将来の健康状態ならびに疾病リスクを一度の血液検査で可視化するサービスを提供する新会社をNECソリューションイノベータが設立した。米SomaLogicの技術に、NECグループが保有するAI(人工知能)や解析の技術、および日本国内の疾病データを組み合わせ、2020年10月からのサービス開始を予定する。2020年7月9日に発表した。

 個人の健康状態や将来の疾病リスクをデジタル技術で解析しようとする研究が進んでいる。たとえば、健康状態や疾病リスクを予測・可視化するための遺伝子検査や血液検査など、さまざまな方法がある。医療データをAI(人工知能)で解析するといった検査方法も開発されている。

 日本では、20歳以上の約7割が健康診断を受診している。血液検査などで健康状態は、ある程度把握できているはずだ。だが実際には、よほど悪い結果でない限り生活習慣を変えるまでには至らず、むしろ具体的にどう対応すれば良いかも不明瞭なままなのが実状だ。

 特に、予防医療の重要性は、まだ認知されていない。脳梗塞、心筋梗塞といった重大疾病だけでも、罹患率がデジタル技術によって、より簡単にわかりやすく可視化されるようになれば、入院や手術のリスクを減らせ医療費削減にもつながる。何よりも健康寿命を伸ばせる。

タンパク質の変化から生活習慣病や疾病を見つける

 こうした予測・可視化技術を研究開発する1社に米SomaLogicがある。数滴の血液成分から5000種類ものタンパク質を測定する「高精度血中タンパク質測定技術」を持っている。

 SomaLogicの設立は20年前。「健康評価と管理を変革するテクノロジー開発」を唯一の企業目標に掲げている。CEO(最高経営責任者)のRoy Smythe(ロイ・スミス)氏は「生活環境や時間によって変化する健康への影響はヒトゲノム情報だけでは検知できない。だが、体内のタンパク質の変化を測定すれば生活習慣病や疾病が見つけられる」と話す。

 ただタンパク質は種類が多く、1度の検査で検知できる数は一般には数百種類である。これに対しSomaLogicは、数滴の血液から、通常検査の5倍以上に当たる数千種類のタンパク質を検知できる次世代血液検査プラットフォーム「SOMAscan」を開発した。

 SOMAscanでは、タンパク質データと健康ナレッジデータベースを蓄積し、これまでに20万人分の血液から50以上の疾病リスクを予測する研究を続けている。「すでに、以前は調べられないような疾病リスクが発見できている。研究が進めば、あらゆるがんや疾病も調べられる可能性がある」とスミス氏は説明する。

 現在は、新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクを予測する研究開発にも取り組んでいる。ワクチンが開発された場合、投与の優先順位を判断するために用いるといった利用方法も考えられるという。

夢のような「誰もが病気にならない世界」を目指す

 このSOMAscanを使ったサービスを日本市場で展開するために始動したのがフォーネスライフ。NECグループのNECソリューションイノベータが2020年4月1日に設立した。SOMAscanに、NECグループが持つAI技術などを組み合わせ、一度の血液測定で健康状態や複数の疾病リスクを予測し、具体的な改善方法をシミュレーションで示すサービスなどを提供する(図1)

図1:米SomaLogicの技術とNECグループのAI技術などによりフォーネスライフのサービスを実現する

 フォーネスライフ代表取締役CEOの江川尚人氏は「夢のような話で不可能と思われるかも知れないが、『誰もが病気にならない、自分らしく生きられる世界』を目指す」と新会社への意気込みを語る。

 そのための事業概要としては、(1)疾病予測アルゴリズムの共同研究、(2)健康状態の見える化/疾病リスク予測サービスの提供、(3)健康支援サービスの開発の3つを挙げる(図2)。

図2:フォーネスライフが挙げる事業領域