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DXを支援する上流コンサルを200人体制にするNEC、グローバルなサービス基盤を用意
NECが顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援体制をさらに強化する。サービスの基盤となる「NECデジタルプラットフォーム」を本格稼働させたほか、上流コンサルタントを現状の100人体制から200人体制にまで拡大するという。同事業の責任者である執行役員の吉崎 敏文 氏が2020年7月7日のオンライン会見で表明した。
「新型コロナウイルスに立ち向かう社会の中で、デジタルは、さまざまな領域で力を発揮している。デジタルは今後、人々のあらゆる活動を包み込んでいく。うした世の中にあって、企業をどう支援していくかを考えている」——。NECの執行役員 吉崎 敏文 氏は、こう力説する(写真1)。
吉崎氏は2019年にNECに着任。以来、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連サービスの提供体制を整えてきた。「これまでの技術提供とシステムの実装という枠を超え、顧客の事業戦略から業務アプリケーションの開発までの一貫したサービスの提供を目指す」(吉崎氏)という。
支援体制の目玉が、それまでカバーしていなかった顧客企業のDX戦略を支援する上流コンサルティング部署の新設である。吉崎氏の直下に、外部の戦略コンサルタントや社内からのデザイナーやエンジニア出身のコンサルタントなど100人規模の組織を立ち上げた。
この組織について吉崎氏は「1年進めてみて十分な手応えを感じている。今後も強化していく。さらに増員して200人規模に持っていきたい」と力を込める。
日本企業のDXには実装経験のあるコンサルタントが必要
同組織が支援しているDXの事例として吉崎氏は、大阪府や横浜銀行、コニカミノルタを挙げる。
大阪府へのDX支援
大阪府が2020年5月29日に運用を開始した「大阪コロナ追跡システム」において、市民からの問い合わせ対応システムをNECが開発した。緊急事態下にあり、10日間で構築しサービスを開始した。
同システムでは、FAQ(良くある質問と回答)をはじめ、基本的な問い合わせにAI(人工知能)が自動で応答し、殺到する問い合わせを無事乗り切れたという。大阪府の発表では、最初の2週間に全10万件あった問い合わせのうち3割を自動応答で対応した。
横浜銀行へのDX支援
横浜銀行は、高い専門性が必要な業務のデジタル化に力を入れている。NECの支援対象として最初に取り組んだのは審査業務だ。初期段階をAIが審査し業務の効率化を高め、人は2次審査以降に専念することで審査精度の向上を目指す。人による審査では検知できなかった口座の不正利用もAIで検知する仕組みも導入し、2020年10月に本番稼働させる予定である。
コニカミノルタへのDX支援
構想段階からNECが参加し、ワークショップを5回実施した。「何をデジタル化し変革すべきか」から始め、最も効果的であろう対象として需要予測を選んだ。サプライチェーンを最適化し需給を調整する仕組みをまず国内で稼働させる。2020年度内には欧州での需要予測ができるように開発を進める。
これら日本企業のDXにおいては、「特に実装を構想にフィードバックすることが求められるため、実装経験のあるコンサルタントの力が必要だ」と吉崎氏は語る。
たとえば日本企業がDX戦略を考える際、「多くは構想から入り、それを検討し実装し、実践につながる流れ、すわわちウォーターフォール型を採っている」(吉崎氏)。
これに対しNECは、「事業戦略に合わせて提供すべきサービスやアプリケーションを決め、それを実装するための環境やインフラへと“逆流”させるアプローチで提案する」(同)という(図1)。同社はこれを「フューチャークリエーションデザイン」と呼ぶ。
外資系企業の経験が長い同氏は、「日本企業であるNECに初めて入り気づいたことは、今のように環境が目まぐるしく変化する中では、顧客に寄り添う形での支援が重要だということだ」と話す。
「当社にはITとネットワークの専門知識を持ったエンジニアが多く在籍し、実装経験も豊富だ。つまり『何ができるか、できないのか』を知ったうえで戦略を提案する。それが正解だと思う」(吉崎氏)とも言う。
DXのコンサル部隊に、システムインテグレーションの現場で経験を積んだ技術者やデザイナーをコンサルタントとして配置転換させているのも、そのため。吉崎氏は「今後も社内人材の登用を進める。そこに外資系の外部コンサルタントがジョインするハイブリッドな環境をもって企業のDXを支援したい」とする。