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子供の歯みがき習慣化を支援するIoT歯ブラシ、ライオンがLOHACOで販売する理由

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2020年9月4日

子供が歯磨きを自主的に続けられるようにするIoT(Internet of Things:モノのインターネット)歯ブラシの新サービスをライオンが開発した。テストマーケティングとして、アスクルが運営する通販サービス「LOHACO(ロハコ)」を通じて2020年9月9日から販売する。2020年8月25日に発表した。

 ライオンは口腔衛生に寄与するため製品を129年前から開発してきた。最近は予防歯科に注力し、昼歯磨きやフロスの習慣化、子供の歯磨きの習慣化などに向けた商品開発や啓発活動に取り組んでいる。

 そんな同社が新たに開発したのは、子供に正しい歯磨き習慣を身に付けさせて成長を促す新サービス「クリニカKid's はみがきのおけいこ(以下、はみがきのおけいこ)」だ(写真1)。絵本を表示するスマートフォン用アプリケーションを見ながら、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)機能を持つ歯ブラシを使うことで、磨き残しのない“正しい”歯磨きの習慣化をサポートする。

写真1:子供に正しい歯磨き習慣を身に付けさせることを目指す「クリニカKid's はみがきのおけいこ」

子供の歯磨きの「嫌がる」「適当にすます」を解消

 対象にする3~6歳の子供にとって、歯磨きは嫌なもの。ライオンが2019年に実施した調査では、68%の子供が「声を掛けられないと歯磨きを始められない」状態だった。はみがきのおけいこは、子供が歯磨きを「嫌がる」「適当にすます」という状態の解消を目指している。

 実は子供の歯磨き嫌いは、触覚防衛反応が残っているためで、ごく自然なことだという。そこで、はみがきのおけいこでは、心理学に基づいたアプローチを採用した。「きっかけを与えてやる気を引き出す」という外発的な動機付けに加え、「歯磨きが上達することに対する興味を引き出す」という内部的な動機付け、さらに「無理なく誘導してあげる」という設計になっている。

 具体的には、まずアプリ上で、歯磨きを一緒に頑張るキャラクターを選ぶことでやる気を引き出す。アニメーションと音声によるガイドで、磨く場所と動かし方を理解させ、さらに上達ポイントを示す。この繰り返しにより、「キレイにすれば気持ちがいい」「磨き方が分かると楽しい」「上達していくのがうれしい」という成功体験を積み重ねさせ、自発的な行動につなげていく。

 正しく歯磨きができているかどうは、IoTセンサーによって手の動きで検知し、その結果を解析処理することで磨き残しの箇所や点数をイラストで表示する(図1)。ライオン ヘルス&ホーム家事業本部 オーラルケア事業部 クリニカブランドマネジャーの横手 弘宣 氏は、「頑張った結果を即フィードバックすることが“ご褒美”になり、子供のやる気を明日につなげられる」と説明する。

図1:歯磨きデータの解析結果の表示例

 はみがきのおけいこの開発の背景には、「家族の健康について不安を感じる人が増えるなど、家族への健康意識が急速に高まっていること」(横手氏)がある。子供の歯磨きに対する悩みは深く、同社調査では母親の86%が「子供の自分みがきについて、大変さがなくなればいいと感じている」と結果だった。

 そうし社会課題に対し、1人ひとりの実態に合った習慣化をサポートするために開発したのがIoTを使った仕組みである。「子供の自発的な歯磨きを誘発し、成長を子供も保護者も体験できる。褒められる体験が『明日も頑張ろう』という思いにつながり好循環が生まれるのが本製品の強みだ」と横手氏は強調する。

 はみがきのおけいこは、歯科や絵本の専門家と共に開発した。「歯磨きの習慣づけを促せる製品」(小児歯科専門家である鶴見大学の朝田 芳信 教授)や、「絵本の良い要素をアプリに取り込んだ製品」(絵本研究家である日本女子大学の石井 光恵 教授)と、それぞれが評価しているという。

 「アプリを見ながらでないと(歯磨きが)できないようでは困る」という保護者の声を受け「音だけモード」も用意した。本体から流れる音声で歯磨きをサポートし、磨いた結果はアプリに蓄積する。