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データ活用に遅れを取る日本企業、背景にはテクノロジーの理解不足が

米Splunkのグローバル企業調査から

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年9月28日

日本企業は5Gとエッジコンピューティングに弱い?

 6つのテクノロジーのうち、特に日本企業の回答が悪かったのは5Gとエッジコンピューティングである。5Gは、日本が8カ国中最低の理解度で、「よく理解している」と回答したマネジャーは24%にとどまっている。

図3:5Gについて「専門的な知識がある」または「よく理解している」と回答した割合

 エッジコンピューティングでは、「ユースケースの開発はしていない」と答えた企業が、8カ国で最も高い58%になった。「最新テクノロジー導入に極めて積極的な中国とは対照的に、日本企業の現状と今後の導入計画の遅さが際立ってしまう結果となった」と福島氏は指摘する。

図4:エッジコンピューティングへの取り組み状況

データの時代に向けた5つの取り組みを提言

 膨大なデータの収集・管理だけでなく、データを操るためのテクノロジーへの理解と導入が遅れている実態を踏まえ、福島氏は、企業の今後の取り組みについて次の5つを提言した。

提言1 :すべてのデータを活用すること。「どんな形であってもデータを取り込めるツールを使って、企業が所有するダークデータを可視化し、把握する態勢を作る。それがスタートだ」(福島氏)

提言2 :ビジネス戦略に基づいてデータ戦略を立てること。データドリブン経営と言われるが、「まさに何のためのデータ活用かを基軸として立てて、その裏付けを取るためにデータを分析することが重要だ」(同)という。

提言3 :セキュリティである。扱うデータ量の増加に対して、セキュリティのリスクは当然高まる。「すべてのデータを取り込み、把握することで、セキュリティリスクも可視化できる。諸刃の剣を逆手に取り、セキュリティ強化にも生かせる」(同)

提言4 :断片的なデータ利用をやめ、企業全体の取り組みにしていくこと。一部分だけのプロジェクトを進めてしまうと、部門の縦割り、サイロ化に拍車をかけてしまう。

 そうならないよう、ツールやデータ処理プロセスの標準化、適切なアクセス権の付与など、データ活用が限定された一部の人のものにないように工夫する。特に日本企業は「部門ごとにデータベースが構築されているケースが多く、全社横断のデータ基盤と活用ルールが必要だ」(同)という。

提言5 :提言4とも関連するが、共通のデータ基盤を全社員が活用できるだけのデータスキルの向上である。まずはスキルの高い人材の採用と育成が重要になる。その人材が中核となり、組織内のすべての役割でデータ活用ができるようにする。

部門ごとに分断されたデータの統合が重要に

 提言について福島氏は、「個別インタビューでも、企業がテクノロジーを活用するためには、明確な目的と計画を持って取り組むことが重要だと答える企業が多い。今後5年でデータは5倍に増えていく中で、そこから価値を見いだし、競争が激しくなっても優位に立つためには、上記5つの点を考えて取り組むことが重要だ」と強調する。

 特に部門ごとに分断されたデータの統合が重要になる。バラバラに集められているデータを統合していくにはどうすればいいのか。福島氏は、次のように、データの横展開による活用の可能性を示す。

 「Splunk製品を導入する企業は当初、セキュリティやIT運用改善を目的にするケースが多い。だが、そこから得られた知見をビジネス側でも活用できないかと考える企業が増えている。そのためには、ビジネス側に可視化したデータを理解できるデータサイエンティストが不可欠になる」

 Splunkが2020年3月に発表した前回調査では、データ活用に積極的な企業ほど、顧客維持率や新規事業の成功率など、パフォーマンスが高いことが取り上げられていた。

 しかし今回の調査では、データ活用に出遅れている企業全体では、増え続けるデータと最新のテクノロジーの活用に遅れが生じていることが明らかになった。この状況を放置すれば、先進企業との格差は、さらに広がることだろう。福島氏が指摘した5つの提言を参考に、早急な取り組みが必要だ。