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”ソフトウェア化”から始まった産業構造の変化の連鎖がいよいよ現実に、PwCコンサルティングの川原氏
自動車業界では「CASE(Connected=コネクテッド、Autonomous=自動化/自律化、Shared=シェアリング、Electric=電動化)」による大きな構造変化が起きている。既存の自動車メーカーや部品メーカー、あるいは新規参入を目指す企業は、どのような戦略を取るべきか。PwCコンサルティング パートナーの川原 英司 氏が、製造業における産業構造変化の先行事例と自動車産業の未来について説明した。
構造変化の最初の段階は“ソフトウェア化”から——。PwCコンサルティング パートナーの川原 英司 氏は、こう指摘する(写真)。次に標準化のための「プラットフォーム化」が加速。社内プラットフォームの位置づけから始まり、それが発展して「オープン化」が進む。
オープン化したプラットフォームに「ハードウェアとサービスの両方に、多くの企業が参加してくる結果、産業構造が変わる」と川原氏はいう。いずれの産業でも、「ここの3つの段階を経て産業構造の変化に至る」(同)
この変化の流れを産業別に見ると、FA(ファクトリーオートメーション)/ロボット分野では、1990年代からCNC(コンピューター数値制御)によってソフトウェア化したものの、プラットフォーム化とオープン化を経て産業構造が変わるまでには比較的長い時間がかかった。
建設機械は、2000年代からGPS(全地球測位システム)を利用したプラットフォームを個別企業が提供するようになり、それがオープン化される動きが今も進んでいる。これがモバイル業界になると、2000年代にスマートフォンが登場してからの動きが非常に早く、「すでに産業構造の変化が一巡した状態」(川原氏)にある。
産業のソフトウェア化が進むと、色々“大変”に
自動車産業でも、ソフトウェア化/プラットフォーム化/オープン化の流れが起きている。「CASE(Connected=コネクテッド、Autonomous=自動化/自律化、Shared=シェアリング、Electric=電動化)」のうちの「E」は電動化を指すが、それ以前にElectronic(電子)化が急速に進み、車は電子機器になろうとしている。
開発対象はソフトウェアが中心になり、開発リソースが膨大に必要になっている。これを「自社内で開発していくのは困難になり、外部の強いプレーヤーに頼る構造になって社内プロセスを改革することになる」(川原氏)
開発を効率的に進めるためにプラットフォーム化が進む。車台としてのプラットフォーム化も進むが、ここでのプラットフォームはソフトウェア開発基盤を指す。コネクテッド化の流れと連動し、インタフェースの標準化につながっていく。
コネクテッドカーの進展により市場ニーズが拡大/多様化してくると、自社のプラットフォームだけでは新しいサービスが提供できなくなる。結果、オープン化を進めることになる。
API(アプリケーションプログラミングインタフェース)の公開、SDK(ソフトウェア開発キット)やリファレンスモデルの提供など、外部のパートナーが開発に参加できる汎用のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)プラットフォームが必要になり、オープンな環境下での製品/サービスの継続的な進化が始まる。
これらの結果、最終的に産業構造の変化が起きる。データ基盤を活用した新たなサービスが登場してくる一方で、ハードウェアはソフトウェアで性能を定義する時代となり、コモディティ化していく。
川原氏は、「産業のソフトウェア化が進むと、色々“大変”になる」という。上述したように、個別製品に対し都度ソフトウェアを開発して実装する作業量が増え、開発効率が低下し、複雑性が増し、開発スピードが遅くなる。効率化を図るには、ソフトウェアのプラットフォーム化が必要になり、さらに効率化を図るにはオープン化に踏み切らなければいけない。
「効率化や合理化を進めた結果、ブルーオーシャンからレッドオーシャンへと向かう皮肉な結果となる」と川原氏は話す。