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日本企業の“習慣病”がデジタル変革を阻む、アビームコンサルティングの安部氏

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年11月24日

新型コロナウイルスへの感染警戒が長期化するなかで、これを契機にビジネス環境における課題をデジタルによって改善しようとする動きが活発化している。そうした中、アビームコンサルティングが「日本企業のDX推進を阻む要因とその解決策について」と題する記者説明会を2020年10月14日に開き、同社執行役員プリンシパルの安部 慶喜 氏が解説した。阻害要因は何で、どう解決できるのか。

 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響はすでに、リーマンショックをはるかに超えている。しかも短期的にしのげばよいものではなく、回復には時間がかかる。企業は、直近の止血と、中長期の戦略の見直しの両面に取り組まなければならない」——。アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパルの安部 慶喜 氏は、こう指摘する(写真1)。

写真1:アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパルの安部 慶喜 氏

 コロナの発生前後で何が変わったかについて、安部氏は、「強制的に、バーチャルや非対面コミュニケーションへの対応が必要になったことが大きい」とみる。

 ただニューノーマル社会の姿はコロナ後も続く。むしろ、「バーチャルなビジネス環境が中心で、リアルはそれを補う役割に変わる可能性もある。デジタル技術を活用したバーチャル環境への対応が必須になる」(安部氏)とも言う(図1)。

図1:COVID-19による環境の変化

 企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みは“待ったなし”の状況になった。もかかわらず、「日本企業のDXは大きく出遅れていると」安部氏は言う。

 「2020年3月時点の調査で、テレワークの実施状況は、世界99カ国の平均が89%なのに対し日本は26%だった。後緊急事態宣言後は増加傾向にあるが、宣言中ですら約半数が出社しているなど、テレワークに対応できない企業の実態が明らかになった」(同、図2)

図2:2020年3月時点のテレワークの実施状況

経営層は企業の“俊敏性”を議論

 ただ、ここに来て、変革の気運は高まっている。「菅政権は、デジタル庁の創設やハンコの廃止など、かなりのスピードで対応を進めている印象がある。これからもDXに向けた取り組みの加速を期待している」と安部氏は話す。

 国だけでなく民間企業も、DXへの施策を打ち出している。SMBC日興証券は2022年度に社内文書を2019年度比で8割減らすためのペーパーレス化を進めている。三井物産では印鑑を電子署名に置き換える取り組みを加速し、2020年2月と比べて電子化は10倍以上に増えている。

 企業のトップマネジメントは現在、経営の俊敏性について議論していると安部氏は明かす。「不況への耐久力や、パンデミックでも企業が存続できる事業ポートフォリオの再構築を、すぐに実行可能にしたい」(安部氏)からだ。そのためには、「オペレーションのデジタル化と、デジタルに対応した組織の変革が必須になる」(同)

 DXに関する社内教育・研修も、三井住友海上や日立製作所、富士通などで活発になっている。「企業のデジタル投資の対象は、モノから人材にシフトしている。直近の業績が悪化する中、ようやく日本も動き出したとの印象がある」と安部氏はいう。