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製造や物流の“現場データ”をつなぐ、独TeamViewerがAR技術を買収した理由

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年12月14日

仏エアバスは作業効率を40%向上

 例えば、工場の作業現場で部品を並べる際、作業者が身に付けたスマートグラスに並べる個数が表示され、作業数を数える必要がなくなる。須永氏は「現場におけるスマートグラスの最大のメリットは、ハンズフリーになること。音声で指示し、結果をスマートグラス上で確認すれば、手を止めずに操作できる」からだ。

 こうした作業現場にスマートグラスを導入している仏エアバスでは、「作業効率を40%向上させている」(小宮氏)という。

 現場の効率化に加え、より上流のデータと連係させれば、「事業全体の精度を高め、変化に対応する経営を目指せる」とする。

 例えば製造業では、ITが弾き出した生産計画と実績値にずれが生じることがある。現場の稼働率が何らかの理由で落ち込んだ結果だが、その理由の把握が難しかった。

 そこにTeamViewerフロントラインが持つ「Connected Operational Technologies」によってワークフローのログを取得し、それを分析すれば、どこで作業が停滞しているかのクリティカルパスを見つけられる。「業務の何が問題なのか、異常の原因は何なのかがわかることが、当社が目指す業務のデジタル化だ」と小宮氏は強調する(図3)。

図3:「Connected Operational Technologies」により現場の課題が把握可能になり

 もっとも、こうした仕組みを機能させるには、「スマートグラスと連携させるアプリケーションが最も重要だ」と須永氏は指摘する。遠隔から指示を出すにしても、画面内に対象を手書きでマーキングするためのアプリケーションが必要になる。作業の標準化においては、ワークフローを管理するアプリケーションとスマートグラスを連携させなければならない。

現場のデータを記録し分析することが重要

 TeamViewerジャパンは今後、TeamViewerフロントラインを製造業を中心に、建設・土木、流通、医療の4分野へ提案していく。同社パートナー営業本部本部長の菰田 詠一 氏は、「日本のOT分野のデジタル化は、諸外国に比べてまだまだ遅れている。販売パートナーへの後方支援を中心に、海外の利用事例の紹介やトレーニングを実施していく」と話す。

 生産労働人口の減少や、熟練技術者のノウハウ断絶などの課題が今後、ますます深刻化・長期化するなかでは、現場のデータを記録し分析することが重要だ。

 ARの現場業務への活用は数年前から提案されてきた。だが一部の特殊な用途に限られていた感がある。リモート接続に実績があるTeamViewerとAR機能がシームレスに連携することで、リアルな現場情報を含めたDXの進展を期待したい。