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スマートシティのためのデジタルツインの分析ツール群、DATAFLUCTが提供

DIGITAL X 編集部
2021年2月15日

スマートシティの実現・運用に必要なデジタルツインを分析するためのツール群を、ビッグデータの分析サービスを手掛けるDATAFLUCTが2021年1月29日に提供を開始した。街づくり課題とされる、防災/環境負荷、移動とエネルギー、にぎわいの創出の3分野を対象に12の分析ツールを用意する。同日に発表した。

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)発ベンチャーでビッグデータ分析サービスを手掛けるDATAFLUCTが提供する「DATAFLUCT smartcity series.」は、スマートシティの実現・運用を支援するためのBI(Business Intelligence)/BA(Business Analytics)ツール群(図1)。都市の実態を反映したデータ群であるデジタルツインを対象にした分析やシミュレーションを可能にする。

図1:スマートシティのデジタルツインを分析・シミュレーションするためのBI/BAツールを提供する

 具体的には、衛星画像や気象情報、POS(販売時点情報管理)データ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)といった種々のビッグデータを言語解析や位置情報解析、機械学習、衛星画像解析といった技術を用いて分析。人やモノの存在位置の把握や、口コミ解析、人流モニタリング、人口シミュレーション、土地利用提案などにより、都市の最適化に向けたPDCAサイクルの実行を支援するという(図2)。

図2:データに基づくPDCAにより都市の最適化を図る

 DATAFLUCT smartcity series.は、発表時点で開発中を含め12種類のBI/BAツールからなっている。大きくは都市や街づくりの課題とされる(1)防災/環境負荷の軽減、(2)移動とエネルギー、(3)にぎわいの創出の3分野に分けている(図3)。

図3:DATAFLUCT smartcity series.のサービスが対象とする都市の課題とデータの範囲

 防災/環境負荷の軽減では、(1)CO2を監視する「DATAFLUCT co2-monitoring.」、(2)災害に強い街づくりを支援する「DATAFLUCT resilience.」、(3)個人の移動や購買に伴うCO2排出量を可視化する「DATAFLUCT carbon-foot.」、(4)スプロール(市街地拡散)現象を可視化し都市の立地の適正化を支援する「DATAFLUCT aline.」を用意する(表1)。

表1:防災/環境負荷の軽減に向けたサービス群
サービス名概要
DATAFLUCT co2-monitoring.衛星で測定した大気中のCO2濃度や気温、経済活動などから、エリアごとのCO2濃度と経済成長の関係性を示唆する。CO2の排出要因と吸収要因を可視化できる
DATAFLUCT resilience.風水害や震災のリスクをエリアごとに予測・可視化する。災害発生時には安全な道路や避難所の混雑状況を提示する
DATAFLUCT carbon-foot.排出量の少ない移動ルートや物品購入をうながすための交通手段やCO2排出量を提示する
DATAFLUCT aline.日本全国を最小250メートル四方に分割したグリッド単位で、年代ごとの人口や建物の増減率を地図上に表示することで、都市計画や公共交通計画の立案、コンパクトシティの推進などを支援する

 移動とエネルギーに向けては、(5)モビリティデータを活用する「DATAFLUCT mobility.」、(6)公共交通の最適化を図る「DATAFLUCT traffic.」、(7)駐車場の経営を支援する「DATAFLUCT parking.」、(8)太陽光発電など再生エネルギーの活用を促進する「DATAFLUCT energy.」を用意する(表2)。

表2:移動とエネルギーを対象にしたサービス群
サービス名概要
DATAFLUCT mobility.交通系のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)データや街角の画像、位置情報などから動的なマップを自動生成。歩行者密度や工事日程、事故情報、ガソリンスタンドの価格情報などの分析結果をAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)として提供する
DATAFLUCT traffic.公共交通の到着時刻や遅延状況などをリアルタイムに把握・可視化することで、渋滞や混雑を予測し他の移動サービスとの接続を支援する。
DATAFLUCT parking.駐車場の予約や満空情報を把握し、他駐車場への誘導や利用機会の向上を図る。駐車場の需要予測や、イベントなどの周辺環境を考慮した料金変動にも利用できる
DATAFLUCT energy.気象データなどから発電量や蓄電量を予測し、適正な電気価格を提示する。電気の利用効率を高め環境負荷の低減も図る

 にぎわいの創出分野では、(9)エリアや施設のにぎわいを可視化する「DATAFLUCT area-management.」、(10)空き店舗の活用を図る「DATAFLUCT space.」、(11)地域の観光を支援する「DATAFLUCT machiyado.」、(12)移動販売の出店を支援する「DATAFLUCT wheel.」を用意する(表3)。

表3:にぎわいの創出を対象にしたサービス群
サービス名概要
DATAFLUCT area-management.エリアや施設の人流や、決済/POSデータに基づく消費動向、SNSデータなどから、前年同時期との比較や増減の因果関係を導き出す。効果的なイベントの企画や出店計画立案、都市開発における意思決定の参考などに利用できる
DATAFLUCT space.中心市街地の空洞化対策として、対象エリアや空き物件に誘致すべき業種の候補を提案する
DATAFLUCT machiyado.宿泊施設や飲食店、観光スポットなどで収集した観光客の行動データと、地域のイベントや天気などのデータを掛け合わせた人流データから、観光スポットや道路の混雑度合いのほか、混雑状況を加味した最適なルートを提示する
DATAFLUCT wheel.人口・人流やイベントなどのデータから、売り上げや収益が最大になり得る出店場所や商品を提案。AIカメラによる顧客の反応を分析し、商品開発や販促活動、接客などの改善も図る。必要なキッチンカーなどの提供を含め、移動販売の出店を一貫して支援する

 今後は、環境や大気の質を監視する「DATAFLUCT env.」や、グリーンインフラに向けた「DATAFLUCT green.」、スマートホームに向けた「DATAFLUCT home.」、混雑回避のための「congestion.」の提供も予定している。