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心臓の異常を心電図から推定するAIの臨床研究、富士通と東大病院が開始

DIGITAL X 編集部
2021年10月19日

心臓の動きや機能の異常を心電図から検出・推定するAI(人工知能)システムを富士通と東大病院(東京大学医学部附属病院)が開発した。その有効性を検証するための臨床研究を2021年10月25日に開始する予定だ。心疾患の早期発見を目指す。2021年10月11日に発表した。

 富士通と東大病院(東京大学医学部附属病院)が開発したのは、心電図のデータから心臓の動きや機能の異常を検出・推定するAI(人工知能)システム。その有効性を検証するための臨床研究を東大病院循環器内科において、2021年10月25日から2022年3月31日にかけて実施する。

 臨床研究では、心臓の動きに異常があるとAIシステムが推定した患者に、精密な心臓超音波検査(心エコー検査)の受けてもらい、医師が心疾患の有無を判断する。AIシステムの推定結果と医師の判断を比較することでAIシステムの有効性を検証する(図1)。

図1:心臓の異常を検出・推定するAIシステムの臨床研究の流れ。AIシステムの判断と医師の判断とを比較し有効性を検証する

 検証では、AIシステムを搭載したサーバーを院内に設置。心電図データを蓄積したサーバーと接続し、患者の心電図を解析する。サーバーの設置・運用は富士通が担当する。

 AIシステムは、東大病院循環器内科の藤生 克仁 特任准教授と小室 一成 教授らの研究グループが富士通と共同で研究開発した。学習データとして、東大病院が持つ受診患者の心電図検査のデータ約63万件と、心エコー検査のデータ約14万件を使用した。

 データ分析には、データをある空間内に配置された点の集合とみなし、その集合の幾何的な情報を抽出する手法である波形解析技術「TDA(Topological Data Analysis)」を使用している。これにより心臓の動きの異常を高い精度で検出できたという。

 富士通は今後、臨床研究の成果を基に、心臓の動きの異常を早期に検出できるシステムの研究開発を進め、重症化予防への適用を図る。東大病院との共同研究では、種々の心疾患を検出できるAIシステムの研究開発を進める。

 心疾患は日本人の死因の第2位とされ、その早期発見には心電図検査が広く用いられている。だが富士通によれば、同検査のみで心臓の形や動きの異常を捉えることは難しく、医療現場では、医師が心音の異常を検知した後に、心エコー検査などを実施している。

 しかし、心エコー検査は、専門医や臨床検査技師がいる限られた施設でしか実施できない。そうした施設で発見された際には、すでに重症化しているケースもあり、早期発見と適切な処置が課題になっている。