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「ソフトウェア・デファインド」×「サステナビリティ」で加速するモビリティ業界の変革

2022年4月11日

サステナビリティへの挑戦をサポートする共通データモデル

 一方、サステナビリティへの挑戦において、マイクロソフト自身はすでに個社でのカーボンニュートラルを達成し、2020年には環境サステナビリティへの新たなコミットメントを発表している。そこでは、2030年までにカーボンネガティブを実現した上で、2050年にはマイクロソフトが創業以来排出してきたCO2排出量をゼロにまで削減する。2030年までには、水の使用量削減や廃棄物ゼロを通じた自然環境保護などにも取り組むという。

 江崎氏は、「自社の取り組みから生まれるテクノロジーやツールを提供し、社会全体のサステナビリティの実現を目指しています」としたうえで、モビリティ産業が直面するサステナビリティの課題を次のように指摘する。

 「まずは、排出量規制の高まりがあります。スコープ3の排出量にもメーカーが責任を負うことになり、不透明なサプライチェーンや分断されたプロセス、データを解消し、トレーサビリティを確保する必要が出てきます。一方で、企業が果たすサステナビリティへの責務に対して、消費者の目は非常に厳しくなっています」(江崎氏)

 スコープ3で要求されるトレーサビリティの確保のためにマイクロソフトが提供するのが、全産業共通のサービス「Microsoft Cloud for Sustainability」である(図3)。すべてのオペレーションから生じるデータをコネクターでつなぎ自動的に収集し、プラットフォーム上で将来を予知・予測し、ダッシュボードとしてのレポーティングを実現する。

図3:トレーサビリティ確保のための全産業共通サービス「Microsoft Cloud for Sustainability」

 同サービスが現時点で対応するのはカーボン関連が中心だ。だが今後は、水や廃棄物についてもカバーするという。レポーティングや会計の業界標準も組み込み、業界に特化したサービスの提供も予定する。

持続可能なモビリティ社会実現への取り組みをさらに加速

 最後に江崎氏は、マイクロソフトが欧州で取り組んでいるモビリティサービスおよびデータマネタイズの共同開発パートナーや戦略的事業、そして日本でのオープンデータへの取り組みを紹介した。

 例えば、イギリスのWejoはコネクテッド・ビークルのデータ・プロバイダーだ。1200万台の自動車から数秒ごとにデータを吸い上げ、異業種連携のエコシステムに対してリアルタイムにデータを提供するビジネスを加速させている。ドイツのTier1サプライヤーであるZFは、クラウドベースのモビリティ・サービス・プロバイダーへの変革を宣言し、DXに取り組んでいる。

 戦略的な標準化事業としては、EU(欧州連合)を中心とした統合データ基盤プロジェクト「GAIA-X(ガイアエックス)」がある。業界をまたがった安全なデータ交換の標準化と相互運用性の実現を目指している。「Catena-X(カテナエックス)」は、カーボンニュートラルに向け、自動車業界の安全な企業間データ交換を目指すアライアンスだ。

 日本における取り組みには、MaaS(Mobility as a Service)の推進や、Microsoft 365を活用したビジネスワーカーのための働き方改革などがある。MaaSでは、リファレンスアーキテクチャーを提供し、観光地向けMaaSを試みている。働き方改革では、駅ナカのワーキングスペースを活用する実証実験に取り組む。いずれも、パートナーや顧客と協働しながら地域生活サービスとしての展開を図っている。

 そこでのマイクロソフトの役割を江崎氏は、「日本社会に即したオープンデータの取り組みを進めながら、ガラパゴスにならないよう、グローバルに連携するためのハブになっていきます」と説明する。

 「働き方改革や、社員のスキル・企業文化の変革、サステナビリティへの対応は、変化への構えである『守りのアプローチ』の位置づけです。それに対し、ソフトウェア・デファインドが支えるCASEやCXの実現、MaaS、モビリティサービス、データマネタイズなど、社会の中で連携していくチャレンジは『攻めのアプローチ』に位置づけています。守りと攻めの両面に共通する課題が、セキュアで透明性のあるデータ連携を実現するための環境です」(江崎氏)

 最後に江崎氏は、「マイクロソフトはプラットフォーマーとして、こうした環境整備に今後も積極的にコミットしていく」と力強く宣言した。地球規模のサステナブルなモビリティ社会の実現に向けて、モビリティ業界の進化はさらに加速していくだろう。

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日本マイクロソフト株式会社

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