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アジャイルな企業しか生き残れない、重要なのは簡単に真似されない“現場力”
シナ・コーポレーション代表取締役の遠藤 功 氏、「アジャイル経営カンファレンス」から
現場力のレベルを“アジャイル”で、もう1段高める
ビジョンを掲げ新しい戦略を示すだけでは、変革は成し遂げられない。大事なのは、その実行力である。ビジョンも戦略も比較的模倣されやすいからだ。しかし、組織的な実行力(ケイパビリティ)は簡単には真似できない。「最後は、卓越した実行能力を持つ企業が生き残るのだ」と遠藤氏は強調する。
なかでも、現場の能力と志気を高めていく「現場力」が重要になってくる。遠藤氏は、「(トップダウンの)DXだけでは日本企業は復権できない。リアルな競争力である現場力に磨きをかけ、DXと現場力の掛け算が大事である。デジタルでは代替できないリアルの力こそが真の差別化の源泉になる」と力を込める(図2)。
現場力をもう1段高いレベルに持っていくためのキーワードが、「アジャイル」だ。「素早い」「機敏」「俊敏」といった意味を持つアジャイルについて遠藤氏は、「その真意は“スピード”ではなく“タイミング”だ」とする。「100点満点が取れるまで待つのではなく、60点のタイミングでトライする。試しながら学習し徐々にブラッシュアップしていく。これがアジャイルの本質だ」という。
遠藤氏は、「日本企業は、100点満点が取れるまでトライしないことが多い。結果、タイミングを逃し事業のチャンスを失ってしまう。素早く決断して試し、ブラッシュアップさせて、より良いものにしていくという“アジャイル”を現場に採り入れる必要がある」と続ける。
現場主体のDXが新しいケイパビリティの獲得につながる
アジャイルを現場に採り入れるために大事な概念が、「デジタルの民主化」だ。遠藤氏は、「デジタルは、現場の従業員が自分たちの仕事や働き方を見直して、新しい価値を生み出すための武器になる」とみる。
単純にデジタル化を進めるのではなく、現場の人たちが自分でデジタルテクノロジーを使いこなしながら、デジタルリテラシーを高める必要がある。「現場が主体的にDXを進められるようになれば、現場力そのものがアップグレードされる」(遠藤氏)からだ。
現場はデジタルの本質を理解し、アジャイルに利用する。遠藤氏は、「60点のタイミングで現場の人たちがまず試し、いろいろなことを学習しながら少しずつ良くしていくのが良い。そのプロセスを通じ、現場そのものがクリエイティブになり、やがては現場力の強化、新しい実行能力を手に入れられる」とする。
例えば、先に挙げたSOMPOはDXのための内製化を進めている。アジャイルのための「スプリントチーム」を持ち、デジタル化の企画や開発を社内で完結させている。様々な現場で試しながら、素早く制作することで、新しいサービスや仕事のやり方を生み出しているという。
アジャイルの実践には会社のカルチャーの在り方が重要
「今こそ、逆ピラミッドの三角形を動かす時だ。DXも戦略転換も、現場主導で進める。本社や経営陣は、現場の実行を支援する。現場こそが競争力のエンジンになる」と遠藤氏は語る(図3)。
現場力には、組織が持つ能力のほかに、組織風土という意味もあるとする。「風土としての現場力が失われると、会社を運営するための基盤そのものが傷んでしまう。ケイパビリティだけでなく、もっと根っこにある『会社のカルチャー』としての現場力を考え合わせることが重要だ」(遠藤氏)
アジャイル経営を会社全体に採り入れ、仕事のやり方や評価の仕方、権限の与え方も変えていく。そのために、アジャイルが実践できるような組織風土を作る。こうした取り組みによってチャレンジを続ければ、新しい価値の創出につながっていく。遠藤氏は、「生まれ変わるとは、未来において顧客から選ばれる会社になるということ」だと強調した。