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SOMPOホールディングス、アジャイル経営にトップから従業員までが日夜奮闘
SOMPOホールディングス グループCDO 楢﨑 浩一 氏、「アジャイル経営カンファレンス」から
業務効率化をDXと捉えるのは間違い
新型コロナウイルスのパンデミックにより人々の生活は大きく変化した。楢﨑氏は、「企業はビジネスのあり方を根本的・抜本的に変えなければ生き残ってはいけない。これまで以上にDXが重要になる」とする。
ところが「日本では、業務効率化などもDXと捉えられている。これは間違った認識である。真のDXとは、競争優位性を確立することだ。そのためには、業務や組織、企業文化を変革し、物理的に社会価値や経済価値を創造する必要がある」と楢﨑氏は訴える。
そうしたDXの推進力について楢﨑氏は、(1)AI(人工知能)、(2)ビッグデータ、(3)CX(Customer Experience:顧客体験)開発、(4)Design Thinking(デザイン思考)」を挙げる。これら4つは「DXにおける“読み・書き・算盤”に該当する」(同)という。
「LINEや、それ以前の電子メール、ExcelやPowerPointなどは、それが登場するまで誰も使っていなかった。それを現代人は当たり前に使いこなしている。AIやビッグデータ、CX開発、Design Thinkingも、3〜5年後には多くの人が習得するようになるだろう。逆に言えば、今からやっておかなければ手遅れになるということだ」(楢﨑氏)
アジャイル開発を実践するスタートアップ企業を設立
SOMPOグループにおけるアジャイルの実践場所の1つが「SOMPO Digital Lab」。東京、シリコンバレー、テルアビブに拠点を持ち、メンバーの60%は社外の人材だ(図2)。アジャイル開発チーム「Sprint Team」にあっては、ほぼ全員が社外人材だという。
SOMPO Digital Labが開発したものの1つに介護施設用の他社製電動車椅子のための自動運転ソフトウェアがある。SOMPOホールディングスが展開するケアホームに導入し、入居者の自立支援やQoL(Quality of Life:生活の質)向上のために使われている。
AI技術を使って、保険証券を解析するシステムも開発した。利用者に手元の保険証券を撮影してもらうだけで、見積もりを最短40秒ほどで渡せるようになった。社内外の問い合わせ対応にもAI技術を活用し、業務効率化と品質向上を実現しているという。
これらを開発したSprint Teamでは、開発と運用担当が協力して継続的に開発する「DevOps(開発と運用の融合)」を一貫して実行する。内製化により、短いサイクルでの開発が可能になった。
アジャイル経営で保険会社からSaaSの会社に生まれ変わる
SOMPOホールディングスは2021年7月、スタートアップ企業「SOMPO Light Vortex」を立ち上げた。世界の企業とのオープンイノベーション(共創)によってデジタル技術を活用し、社会全体への新たな価値提供を目指すという。
すでに新型コロナウイルスに対応したワクチン接種証明や陰性証明を表示するアプリケーション「Light PASS」や、スマートフォンを使って心と体の状態を計測するアプリ「Light Checker」を開発した。Light PASSは徳島県に採用された。
リアルデータプラットフォーム(RDP)を構築し、新たな顧客価値の創造にも乗り出している。SOMPOグループが取得しているリアルデータを蓄積・解析することで、データエビデンスに基づくソリューション開発に利用する(図3)。
楢﨑氏は、「SOMPOホールディングスは保険会社からSaaS(Software as as Service)の会社に変わろうとしている。そのサービスの中身は、安心と安全と健康に資するものでなければならない。全く新しいサービスをイノベイティブに、アジャイルに作っていく。そのためにアジャイル経営たらんと、トップから従業員までの全員が日夜奮闘している」と、SOMPOの意気込みを代弁する。