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SOMPOホールディングス、アジャイル経営にトップから従業員までが日夜奮闘

SOMPOホールディングス グループCDO 楢﨑 浩一 氏、「アジャイル経営カンファレンス」から

ANDG CO., LTD.
2022年4月28日

SOMPOホールディングスは、アジャイル経営の実践により、保険分野から介護・医療といった分野への事業拡大を進める。同社デジタル事業オーナー グループCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)執行役専務の楢﨑 浩一 氏が、2022年1月21日にオンライン開催された「アジャイル経営カンファレンス」(主催:アジャイル経営カンファレンス実行委員会)に登壇し、自社のデジタル戦略について語った。

 「日本ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が進まず、いつまでも旧態依然のままで、海外の国に遅れを取っている。特に保険業界は保守的だ。このまま何もしなければ、保険業界は『ゆでガエル』になって消滅してしまう」−−。SOMPOホールディングス デジタル事業オーナー グループCDO 執行役専務の楢﨑 浩一 氏は、こう指摘する(写真1)。

写真1: SOMPOホールディングス デジタル事業オーナー グループCDO 執行役専務の楢﨑 浩一 氏

 「ゆでガエル」とは、環境の変化に気づかないうちに手遅れになってしまうことを指す。そんな日本の現状に、シリコンバレーでスタートアップ企業を経営した経験を持つ楢﨑氏は、強烈な危機感を募らせる。

 SOMPOがDXによって目指すビジョンは「安心・安全・健康のテーマパーク」。だが、そのDXへの取り組み姿勢は「DX or Die(DXができなければ死ぬだけ)」だと、楢﨑氏は力を込める。

アジャイルは「失敗」こそがポイント

 楢﨑氏は三菱商事時代に、イラン・イラク戦争下のバグダッドに滞在し、生死の境をさまよう体験をした。その体験が、後のスタートアップ企業への転職後もカオスな状況の中で生き延びることを可能にしたという。

 「バグダッド後、シリコンバレー駐在を機にベンチャー企業に惹かれ、5社のソフトウェア関連スタートアップで事業開発や経営に携わった。その間、何度か会社が潰れかけた。しかし、シリコンバレーで働く人々は事業に失敗して会社が潰れても平気で、笑いながらまた新しいスタートアップを作る。そうした会社の作り方、経営の回し方こそがアジャイルだ」(楢﨑氏)

 楢﨑氏は、「アジャイルは失敗こそがポイントだ。一発でOKになるようなものはアジャイルではない」と断言する。「失敗を重ねながら、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(行動)の、いわゆるPDCAのサイクルを、たくさん回すプロセスが重要になる」(同)とする。

 「小さなサクセスで終わってはいけない。徹底的に試行錯誤を繰り返す。一度成功しても、次の瞬間には成功ではなくなっている可能性がある。絶えずPDCAサイクルを回すことを念頭に、『Fail Fast, Fail Many(速く、何度も失敗する)』を実践しなければいけない」(楢﨑氏)

Know HowではなくKnow Whoの時代に

 日本では「朝令暮改」はネガティブに捉えられている。だが、アジャイルの考え方では、「朝決めたことを夕方まで変えないのは“遅い”と映る。むしろ、「10分前に言ったことすら全部止め、やり直すという考え方がアジャイルだ」(楢﨑氏)。

 例えば、スマートフォンやパソコンの基本ソフトウェア(OS)は定期的にアップデートされる。そのために開発現場では週2回というサイクルで改修が続けられている。楢﨑氏は「ロングタームで物事を考える姿勢では、これからの世界は生き残れない」と強調する。

 日本人がノウハウに頼りたがるのも問題だとする。楢﨑氏は、「ノウハウを自分一人で抱え込み、情報の非対称性で儲けるようなビジネスモデルは崩壊した。特殊なソフトウェア技術も、誰もが利用できるオープンソース化が盛んになるなど、どれだけ多くの人に貢献できるかが重要になっている。ノウハウ(Know How = 知識)ではなく、ノウフー(Know Who = ハート)の時代だ」と指摘する。

 「結局は『人』だ。人はデジタルな無機質なものによって動くのではなく、共感や義理人情、助け合いによって動く。シリコンバレーでも、熱い心を持った人たちが集まってものを作っている。アジャイルの本質もここにある」と楢﨑氏は熱く語る。