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国内企業の半数がデータガバナンスに課題あり、EY Japanが調査

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2022年5月19日

企業のデータ活用が重要度を増すなかで、安全かつ効率よくデータを管理するだけでなく、さらに社会の要求にも応えるデータ運用が必要になっている--。EY Japanは、こう提言する。同社が実施したデータガバナンスに関する調査から日本企業が抱える課題が浮かんできた。

 EY Japanの『データガバナンスに関する企業調査』は、日本企業のデータ利活用に係るガバナンス体制の整備状況を客観的に示すための調査。調査対象企業は506件で、うち91%が上場企業である。業種や売り上げ規模は様々だ。

データ管理の知識体系DIMBOK2を基準に成熟度を可視化

 調査では、国際データマネジメント協会(DAMA International)が発行するデータマネジメントのための知識体系である「DIMBOK2(Data Management Body of Knowledgeの第2版)」(2017年)が挙げる全11項目に対し、実施状況を質問。結果を5点満点で評したレーダーチャートにおける11角形の面積によってデータガバナンスの成熟度を可視化した。

図1:「DIMBOK2(Data Management Body of Knowledgeの第2版)」(2017年)が挙げる11項目

 DIMBOK2とデータガバナンスの関係性について、EY新日本有限責任監査法人 金融事業部/アシュアランスイノベーション本部 アソシエイトパートナーの安達 知可良 氏は、「経営層はデータ戦略に方向付けをし、必要に応じて人員配置や組織改編などを事業部門に指示する。これがまさにデータガバナンスであり、その実行指針となるDMBOK2との関連は強い」と説明する。

写真1:EY新日本有限責任監査法人 金融事業部/アシュアランスイノベーション本部 アソシエイトパートナーの安達 知可良 氏

 具体的は、企業がデータを収集し、ビジネスに生かすためには、様々なテクノロジーを組み合わせてデータを連携させる必要がある。そのデータは、使いやすい形に加工・変換しておかなければならない。非構造化データなら正しくタグ付けするなどだ。

 データ構造と運用体制が確立した後も、それを企業の経営戦略に沿った形で活用できる組織体制が求められる。DIMBOK2の11の知識領域には、これらデータの分類からテクノロジーの定義、データ構造の定義や運用の指針、組織体制などが明確に規定されている。

 調査の結果、日本企業全体の平均では、「データセキュリティ」および「データストレージとオペレーション」の2項目だけだ3点以上と比較的高かった(図2)。だが他の項目はすべて1点〜2点台と低かった。

図2:『データガバナンスに関する企業調査』の調査結果

 売り上げ規模別では、売上高が大きい企業ほど成熟度が高い傾向が出た。DX(デジタルトランスフォーメーション)認定企業とそれ以外では、DX認定企業が高かった。「DXに力を入れている企業は、データ統合と相互運用性などの項目で非認定の企業と比べて数値が高い」(安達氏)。業種別では、金融業が比較的高い成熟度を示した。

 11項目別の結果では、データガバナンスの数値が平均で1.8点と低かった。データモデリングとデザイン、データアーキテクチャーについても、実施していない企業が半数を超え、平均値も低い。安達氏は、「これらの項目ができていないと、企業が非財務情報を扱うことは難しいと考えている」とする。