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人とプロセスとデータをつなぐ、米Autodeskが見据えるアフターコロナのチームワークの作り方【後編】

米ニューオリンズで開かれた「Autodesk University 2022」より

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2022年12月19日

開発プロセスの統合で支援するAutodesk Fusion

 「Autodesk Fusion」について、担当の製品開発・製造ソリューション エクゼクティブ・バイス・プレジデントのジェフ・キンダー(Jeff Kinder)氏は、「開発競争をイノベーションによって成功させるには、アイデアだけでなく製品開発プロセス全体を接続する手段も重要になる。PDM(製品データ管理)/PLM(製品ライフサイクル管理)、CAD/CAM(コンピューターによる製造)の連携を図るのが1つの方法だ」と述べる。

 Autodesk Fusionの中核になるのは、3D CADソフトウェアの「Fusion 360」。機械設計ソフトウェアの「Inventor」PDMの「Vault」、プロダクト設計ソフトウェア「Alias」などと連携し、クラウド上でのワークフローを実現する。米Ansysと提携により、設計・製造プロセスに電子回路の設計を組み込めるようにもした。電子回路基板の信号完全性をFusion 360上でシミュレーションできる(図3)。

図3:米Ansysと提携しFusion 360上で基盤回路のシミュレーションを可能にしている

 クラウド上でのワークフローが重要な背景について、デザインコンサルティング会社の英Seymourpowellのリードストラテジストであるキャロライン・ジェイコブ(Caroline Jacob)氏は、「設計・製造分野の課題は、サプライチェーンにおける持続可能なプロセスの実現にシフトしている」と説明する。

 同社が手掛けた蘭Fairphoneのためのスマートフォンの開発プロジェクトでは、環境負荷に配慮しパーツ交換が容易な製品の設計にFusion360を利用し、戦略の立案から製品設計までを複数のチームが並行して担当した。特に、製品のライフサイクルを通じたCO2の発生量を示すカーボンフットプリントを考慮し、データから最適なデザインを発想する「ジェネレーティブデザイン」を実現したという。

戦略的パートナーシップでDXを共に推進する

 クラウド上に業種・業務が求めるワークフローを実現しようとするAutodeskの新クラウド戦略においては、同社は「戦略的パートナーシップ」と呼ぶ業務提携が重要な意味を持ってくる。

 その戦略的パートナーシップには、Autodeskと顧客との関係と、Autodeskと連携する各種製品/サービスベンダーとの関係の2つの側面がある。前者の代表例が、冒頭でも紹介された大和ハウス。Autodeskとは2018年より段階的な提携を結んできた。同社の河野氏は「ツールを足がかりにAutodeskの関係性も新たなステージへと引き上げたい」とする。

 後者の一例が、Autodeskの新サービスが動作するクラウド環境を提供する米AWS(Amazon Web Services)。Autodeskのバンゼル氏は、「AWSとの長年にわたるパートナーシップにより、機密性の高いデータを保護するためのセキュリティと暗号化を実現してきた」と強調する。

 両者の側面を持つ戦略的パートナーシップもある。AutodeskのBIMユーザーである仏シュナイダーエレクトリックとは、Revitの拡張機能となる「Advanced Electrical Design」を共同で開発している。建物のライフサイクル全体におけるエネルギー効率を高めるために、電気関連の設計をBIMワークフローに統合する。

 業種・業務のニーズが多様化・複雑化する中で、これらの戦略的パートナーシップが、どこまで拡張でき、十分に機能し、新たなチームワークを実現していくのか。テクノロジーの変化とともに注目したい。