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2024年のCESは広範囲のテクノロジーを“全部のせ”、生成AIによるDXの広がりも

「CES 2024」から、基調講演にみるトレンド

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2024年2月7日

世界最大級のテックトレンドイベント「CES(シーイーエス)」が米国ラスベガスで2024年1月9日から12日にかけて開催された。4年ぶりに、パンデミック以前とほぼ同様に大きな制約条件がない状態となり、展示会からカンファレンスまでが大盛況だった。出店者数は世界から4300を超え、150以上の国や地域から13万5000人以上が訪れた。本稿では基調講演を中心に2024年のCESの様子を報告する。

 2024年の「CES(シーイーエス)」は、主催者であるCTA(全米民生技術協会)が、ラジオ製造業界団体としてスタートしてから100周年を迎えた記念の年でもある。1967年に米ニューヨークで始まったCESは、テレビから家電、コンピューター、ITへとデジタル分野を中心に対象ジャンルを広げてきた。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック前ごろからは、モビリティやデジタルヘルス、スポーツテック、エンターテインメント、オンラインマーケットなど、あらゆる業界を取り込み、さらに規模を拡大。今回の展示カテゴリーは追加されたAI(人工知能)含め50近くにまで増え、開催テーマの「ALL ON」を象徴するかのように“全部のせ”の状況だった。(写真1)。

写真1:CESは、あらゆる分野から「ALL ON(全部のせ)」で参加するテックトレンドイベントへと拡大している

 会期初日に開かれる恒例のオープニングセレモニーで、CTAの社長 兼 CEO(最高経営責任者)のゲーリー・シャピロ氏は、「20年以上前からすべての企業がテクノロジー企業になると言い続けてきたとおり、出展企業は多様化し、テックエコシステムに与えるCESの影響力が高まっている」とアピールした。

製造現場のDXを加速させる独シーメンス

 今回の基調講演には、ドイツの大手総合電機メーカーのシーメンスと、韓国の重工業メーカーであるHDヒュンダイ、そして米国の半導体メーカーのインテルとクァルコムなどが登壇し、最新テクノロジーの活用や、それがビジネスにどう結び付いているのかを紹介した。

 こうした製造業や産業機器、半導体設計といったエンタープライズ領域のテクノロジーを注視していることはCTA自身、リサーチに基づく2024年テックトレンド「Tech Trends to Watch」においても発表している。

 基調講演にあって最も注目したいのが、シーメンスの発表内容だ。エレクトロニクス、オートメーションなどのデジタル分野において同社は、インダストリー、インフラストラクチャー、交通、ヘルスケアを中核事業に位置付け、そこにDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するための製品/サービスを展開している。

写真2:独シーメンスの基調講演の様子

 そこでは、リアルとデジタルの融合がもたらす価値に早くから注目し、オープンビジネスプラットフォームを強化してきた。産業向けメタバースの開発や、製造現場のデジタルツイン実現などにも力を入れている。生成AI(人工知能)技術の導入では米Microsoftとパートナーシップを結び、開発者向けチャットボット「AIコンパニオン」を提供する。

 今回の基調講演では、Microsoftのライバルともいえる米AWS(Amazon Web Services)とのパートナーシップ強化を発表し、エンジニアが生成AIアプリケーションをより簡単に構築できるようにするとした。その直前にはMicrosoftとの連携についても話しており、相手を選ばす最適なパートナーシップを組むという姿勢は、日本企業にはあまり見られない動きといえるかもしれない。

 基調講演前にプレス発表したばかりのソニーとのパートナーシップでは、新型のXR(xR:クロスリアリティ)対応HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を共同開発していることを発表した。バーチャル空間で没入型の共同作業を実現することを主な用途に設定し、ソニーの空間コンテンツ制作システムと統合した「NX Immersive Designer」を2024年中に提供する予定である。