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川崎重工とユーハイム、神戸市が誘致した米マイクロソフトのAIラボを活用しDXを加速

かのう よしこ
2024年4月12日

「Microsoft AI Co-Innovation Lab」は米マイクロソフトがAI(人工知能)/IoT(モノのインターネット)領域での製品/サービス開発を支援するための拠点。世界で6拠点目となるラボが2023年10月、神戸市に開設された。同ラボを活用し川崎重工業や、菓子メーカーのユーハイムはDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを加速している。誘致した神戸市が2024年3月21日に開いた報道陣向けツアーから、両者の取り組みやラボの現状を紹介する。

 「Microsoft AI Co-Innovation Lab」は、米マイクロソフトがAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった技術を使った製品/サービスの開発を支援するための拠点である。2017年にマイクロソフトが本社(米レドモンド)に開設して以来、独ミュンヘン、中国・上海、米サンフランシスコ、ウルグアイのモンテビデオにも開設。2023年10月、日本では初となる拠点が神戸市に開設された(以下、同拠点を「神戸ラボ」と呼ぶ)。

 利用形態は世界共通。利用が承認されるとNDA(秘密保持契約)を締結したうえで、企業に専任技術者がアサインされ、完全な個別対応により、各社が持つ実データを使った製品/サービスの開発支援が受けられる。すべての成果物はラボの利用企業に帰属する。会議室やフォンブース、神戸港が見える休憩スペースのほか、公開可能な共創事例のデモスペースもある。

川崎重工やユーハイムは神戸ラボ開設以前から共創を開始

 神戸ラボを活用する企業の1社が川崎重工業である。2017年の米本社での開設時から活用してきた。神戸ラボの開設準備にも携わり、誘致だけでなく、地元企業との連携を促す「AI Co-Innovation Labs KOBE活用推進協議会」を設立、その幹事会社を務めている。

 川崎重工が、同ラボに期待するのは、ロボット事業におけるAI技術などの活用だ。将来の労働人口不足に向けた課題解決策の1つに位置付ける。神戸ラボでは、ロボットへの生成AI技術の活用に向けてマイクロソフトとの共創を進めている。

写真1:川崎重工業が神戸ラボで共創するロボット。写真は展示ブースのもの

 同社 技術開発本部 副本部長の加賀谷 博昭 氏は、「製造業のバリューチェーンの中で当社は日々、業務の効率化に取り組んでいる。生成AI技術は我々の仕事を大きく変えるツールになると認識している。企画段階なら、何百ページもあるような調査資料を要約したり、過去の設計事例からデータをうまく探したりと、まさしく『copilot(副操縦士)』的な役割を期待している」と語る。

写真2:川崎重工業 技術開発本部 副本部長の加賀谷 博昭 氏

 バウムクーヘンで知られる菓子メーカーのユーハイムも、神戸ラボ開設前からマイクロソフトと共創してきた。2016年に開始したプロジェクト「南アフリカのスラム街の子供達にバウムクーヘンを届けたい」である。

 同プロジェクトでは、持ち運べる小型オーブンを作り、熟練職人の“焼き”技術をAIが学習することで、遠隔地でも“こだわり”のバウムクーヘンを提供できるようにした。そこでの“AI職人”は「THEO(テオ)」と名付けられ、現在20台程が全国に“派遣”されているという。

写真3:ユーハイムがマイクロソフトとの共創で開発した“AI職人”の「THEO(テオ)。写真は展示ブースのもの

 同社 代表取締役社長の河本 英雄 氏は「バウムクーヘンは焼く技術が非常に難しい。機械を動かすだけでも3週間程度の研修が必要で、ベテランになるには1〜2年の経験が必要だ。“AI職人”はデータの作成に3日間程度を要するだけだ。現在は子会社が“AI職人”の派遣業を手掛けている。今後はTHEOをインターネットにつなぎ、職人のレシピをクラウド上で使えるようにすると同時に、レシピの著作権整備も進めている」と説明する。

写真4:ユーハイム 代表取締役社長の河本 英雄 氏

 加えて、「菓子屋である私が生成AIやIoTを語るとは、これまで思ってもみなかった。ただ、きっかけさえあれば、使えるし、使い始めれば、菓子や業界そのものが大きく変わる可能性がある。神戸のスイーツ業界でのDXを進めたい」とも話す。