• News
  • 共通

DX推進を阻む人材確保と育成の壁、IPAの『DX動向2024』が指摘

田中 克己(IT産業ジャーナリスト)
2024年7月23日

データ活用やレガシーシステム刷新も人材不足が課題に

 DXを進めるうえではデータの活用が欠かせない。実際、調査でも、データやAI(人工知能)技術、生成AIの利用・導入状況、システム開発の内製化、レガシーシステムの刷新において、データ活用が進んでいる企業ほどDXの成果が出ている。「新製品・新サービスの創出」や「既存製品・サービスの高度化、付加価値向上」などに着手している割合も高いという。

 データ活用の目的としては、「DXの成果が出ている企業」は「成果が出ていない企業」に比べ、「新製品・新サービスの創出」と「既存製品・サービスの高度化、付加価値向上」「集客効果の向上」を挙げる率が高い(図5)。

図5:DXの成果別に見たデータの利用目的(出所:『DX動向2024』、IPA、2024年6月)

 ただデータ活用においても、その課題として6割弱が「人材の確保が難しい」を挙げる。それに「データ管理システムが整備されていない」(42.6%)、「データ利活用の方針、文化がない」(40%)が続く(図6)。

図6:データの整備・管理・流通における課題。データ利用に「今後も取り組む予定はない」とした企業を除く(出所:『DX動向2024』、IPA、2024年6月)

 システム開発の内製化も成果に影響する。調査では「ソーシング手段」として聞いているが、競争領域であるコア事業の内製化率が高まっている。「アジリティを重視するシステム」は23%、「低コストであることを重視して導入するシステム」は23.5%と、それぞれ前回調査より10ポイント増えた(図7)。ただし外部委託も増えており、システムごとに内製化と外部委託を分けているとみられる。

図7:ソーシング手段の状況

 内製化における課題も、9割弱が「人材の確保と育成」とする(図8)。それに「新しい技術への対応」「開発量の増減への対応」が続く。

図8:内製化を進めている企業における内製化を進めるにあたっての課題(出所:『DX動向2024』、IPA、2024年6月)

 レガシーシステム刷新の課題も同じく人材だ。河野氏は、「レガシーシステムが残っているのかどうかも分からないなど、人材不足からシステムの棚卸もできていない状況にある」と指摘する。ブラックボックス化と技術者の高齢化が「レガシーを刷新するリーダーがない」や「レガシーを分かる人材がいない」などと嘆くユーザー企業を増やしている。