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企業のノウハウや暗黙知が生成AIにより新たなIPになり競争力の源泉になる
「3DEXPERIENCE WORLD 2025」より
製造業におけるAI(人工知能)技術の活用方法が模索される中、生成AI技術の登場は、その活用法を大きく変えようとしている。その中で3D(3次元)CAD(コンピューターによる設計)データ管理などを手掛ける仏ダッソー・システムズ(Dassault Systèmes)は、その核心は企業固有の「IP(Intellectual Property:知的財産)」にあると主張する。どういう意味か。同社の年次イベント「3DEXPERIENCE WORLD 2025」(米ヒューストン、2025年2月23日〜26日)での基調講演などから、その真意を探る。
「AI(人工知能)技術は今後、単なる作業の自動化のためではなく、より良い意思決定を支えるための装置になる。あなたのビジネスそのものにとって重要なテクノロジーだ」--。3D(3次元)CAD(コンピューターによる設計)データの管理などを手掛ける仏ダッソー・システムズ(Dassault Systèmes)のCEO(最高経営責任者)であるパスカル・ダロズ(Pascal Daloz)氏は、同社の年次イベント「3DEXPERIENCE WORLD 2025」(米ヒューストン、2025年2月23日〜26日)の基調講演でこう主張した(写真1)。
製造業はこれまで、AI技術を既存の業務プロセスの自動化や効率化などに積極的に適用しようとしてきた。生産ラインでの不良品検知や、設備の状態監視による予知保全など人手に頼ってきた業務を、より速く、より正確に実行するためだ。
AIの根幹をなす各社IPの重要性が高まる
これに対しダロズ氏は「これからのAI技術の役割は、これまで存在しなかった価値、すなわち知識や洞察(インサイト)、サービスそのものを生成することに変化する」と指摘する。同時に強調するのが「AIモデルの学習において、その根幹をなす「IP(Intellectual Property:知的財産)の重要性が高まる」(同)ことである。
IPいえば一般には、特許や意匠など、法的に保護された知財を指す。だがダロズ氏は「これからのIPには、企業が長年、現場に蓄積してきた各社固有の知識やノウハウ、熟練者らの活動の中に眠っている暗黙知までが含まれる」とする。
なぜなら、生成AI技術により暗黙知の形式化・数値化が容易になった今、例えば熟練設計者が「この部品の角は、こうした理由から丸みを持たせるべきだ」と判断した思考プロセスが学習され「そうしたコンセプトや設計思想を持つ次なる設計を生成できるようになる」(ダロズ氏)からだ。暗黙知も、その企業だけが持つIPになるというわけだ。
ダッソー子会社で3D CADソフトウェアを手掛けるSolidWorksのCEOであるマニッシュ・クマー(Manish Kumar)氏も「IPが企業の競争優位性の源泉だ」と強調し、こう説明する(写真2)。
「汎用的なデータセットで学習したAIモデルが生み出すのは、ありきたりの凡庸な答えにしかならない。企業独自のIPを深く学習したAIモデルがあって初めて、その企業ならではの強みを織り込んだ設計や、他社には真似できない生産方式、そして心に響く顧客体験(CX:Customer Experience)価値を提案できるようになる」