- News
- 共通
AIで競争優位を築く ─SaaS事業に不可欠な“AI-Readyなデータ基盤”とは
「SaaS on OCI Forum 2025」より、日本オラクル 取締役執行役社長 三澤 智光 氏
- 提供:
- 日本オラクル
AI活用ではマルチモーダルなデータモデルが重要に
こうした基本アーキテクチャーの優位性に加え、新たな進化の方向性として三澤氏が提示するのが「Agentic AI(エージェント型AI)」である。今後のAI技術の利用拡大に伴い「アプリケーション開発とアプリケーション自体のあり方は一変する。UI(ユーザーインタフェース)は対話型になり、ビジネスロジックは人に代わってAIが開発し、複数のAIエージェントが連携してビジネスプロセスを遂行する」(同)という。
そこで問題になるのがデータだ。「データがAI-Readyでなければ、たとえ優れたAI技術を導入しても、その能力を十分に引き出すことは困難だ」と三澤氏は指摘する。「データの意味や関連性、文脈などを示すコンテキストがデータに紐づいて初めて、AIは適切な回答を生成できる」(同)からだ。
現状のDBを概観すれば、その大半はデータ種類別、あるいは業務(目的)別に整備され、異なるデータプラットフォームでデータが管理されている。「データが分断化されることで、データ一貫性欠如による精度低下だけでなく、DBからAI用のデータストアにデータをコピーした時点でデータがコンテキストから切り離され、価値が大きく削がれてしまう。また今後よりエンタープライズでのAI活用に求められるセキュリティやガバナンスにも対応できない」と三澤氏は強調する。
この問題をOCIはすでに抜本的に解消しているという。具体的には「Oracle Autonomous Data Platform」が採用するマルチモーダルなデータモデルによるデータ一元管理である。エージェント型AIで発生するトランザクションに耐えうるパフォーマンスとスケーラビリティを持つAI-Readyなデータプラットフォームだ。リレーショナル、ドキュメント、ベクトル、画像など、さまざまなデータをシングルデータモデルでセキュアに管理でき、AI専用の外部データストアを経由することなくデータをAI に直接提供できる。
三澤氏は「コンテキストは当然維持される。すなわちデータとコンテキストをAIに今すぐフィードできるデータアーキテクチャーである。今後のAI活用においては、こうしたデータ管理が不可欠だ」と強調する(図2)。
コンテキストを付加するためにOracle Autonomous Data Platformは、コメント機能やアノテーション機能も持つ。各社のLLMに対応するほか、アクセス制御やマスキングといったセキュリティ施策も可能になる。AI活用で発生する大量のトラフィックに対しても「OCIの高いパフォーマンスとスケーラビリティで応えられる」(三澤氏)という。
AIにより再発見され再発明されたオラクル
AI活用では多くの企業が壁にぶつかっているのが実状だ。LLMの学習で試行錯誤し、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)を組んでも回答精度がなかなか高まらない。「この段階で止まっているのが多くのSaaS企業の実態だ」と三澤氏は指摘する。
この状況の打開策として、「最適なLLMの活用、マルチモーダルなRAGの実現、Oracle Autonomous Data PlatformによるSQLによる検索精度の向上」を組み合わせられることを挙げる。
また、AIのアプリケーション開発をより迅速に実現し、既存システムやアプリケーションと組み合わせるために、ローコードツールであるOracle APEXや、自然言語からのデータ検索ならびに回答作成までをすぐに実現可能なSelect AI機能などを、Oracle Autonomous Data Platform標準機能として提供している。
これらのメリットをより広く享受してもらうためにオラクルは「OCIのマルチクラウド展開によるエコシステムの拡大を推し進めている」(三澤氏)。具体的には、Oracle Autonomous Data Platformは、マイクロソフト(Microsoft Azure)、グーグル(Google Cloud)、アマゾン(AWS)のクラウドで利用でき、どのクラウドでも同じように動くことを指す。「完全なポータビリティを担保しており、ベンダーロックインの心配なく安心して利用に乗り出せる」(同)という。
AI活用に行き詰まりを感じている、あるいはAIサービスの立ち上げに不安を抱えている企業に対する支援策としてコンサルティングサービスも用意している。生成AIのビジネス価値の構想とプロジェクト化、生成AIユースケースの策定、生成AIユースケースの検証環境準備と検証などを伴走型で支援する。
三澤氏は「オラクルはAIにより再発見され、再発明されたのだ」という。それは、スケーラブルなDBクラスターを実現する「Oracle Real Application Cluster」や高性能のDB専用マシン「Oracle Exadata」といった長年の技術開発が世界で最高級の性能を持つAIインフラにつながり、DBの拡張性を高め続けてきたことがAIに適したマルチモーダルDBとして実を結びつつあるという意味だ。
「今の成果は偶然の産物かもしれない。であるならこれを好機と捉え、AIに最適化した仕組み作りに戦略的に取り組む。SaaS事業者のプロダクトや業務基盤へのAI導入が持続的な価値創出につながるよう、技術基盤と支援体制の両面からSaaS業界の成長と発展に貢献したい」と三澤氏は力を込める。
「SaaS on OCI Forum」について
SaaS事業者がパブリッククラウドを活用し、自社ビジネスをさらに発展させるきっかけになることを目的に開催される年次イベント。今回で3回目を迎えた。毎回、SaaS事業者の経営層や事業責任者、自社製品/サービスの開発・運用・運営などに携わる担当者が参加している。リアルな事例講演が聴けると大変好評だという。参加者同士のコミュニケーションも活発で、新たな協業やビジネス創出の場としても活用されるなど、SaaS事業者にとって有意義な機会になっている。