• News
  • 共通

AIで競争優位を築く ─SaaS事業に不可欠な“AI-Readyなデータ基盤”とは

「SaaS on OCI Forum 2025」より、日本オラクル 取締役執行役社長 三澤 智光 氏

岡崎 勝己(ITジャーナリスト)
2025年8月12日

SaaS市場は、国内IT市場全体の2倍以上のスピードで拡大を続けている。特にAI-データ連携が牽引役であることは疑う余地がないだろう。とはいえ、実装したAIがユーザーを満足させなければ、投資は無駄になる。そのAIによる価値創出を左右するのがAI-Readyなデータ基盤だ。日本オラクルで取締役執行役社長を務める三澤智光氏が「SaaS on OCI Forum 2025(主催:日本オラクル、2025年7月17日)」に登壇し、生成AI時代のデータ基盤の要件を解説した。

 「生成AI(人工知能)技術の急速な広がりを背景に今、世界中の資金が、この領域に注ぎ込まれている。その勢いとスピード感から1年後のAIは、今とは別物になっていることは確実だ」--。最近の生成AIブームに対し、日本オラクル 取締役執行役社長の三澤智光氏は、こう分析する(写真1)。

写真1:日本オラクル 取締役執行役社長 三澤 智光 氏

後発だからこそのミッションクリティカルに最適なモダンアーキテクチャー

 そのうえで三澤氏は「これまで多様性と独自性を追求してきた『Oracle Cloud Infrastructure(OCI)』をAI-Readyなプラットフォームとしてさらに進化させている」と力を込める。OCIは低価格、コストパフォーマンスの良さから多くの企業に採用されているが、昨今はLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)の開発を手掛ける多くの企業に採用されているという。その理由を三澤氏は「OCIが圧倒的なパフォーマンスとスケーラビリティを誇るAI向けインフラを提供している点に集約される。OpenAIだけでなく米マイクロソフトや米Meta、米NVIDIAなどの名だたるAI企業のAI基盤に採用されている」と説明する。

 では、OCIを進化させてきた多様性と独自性とは具体的には何か。三澤氏がキーワードとして第一に挙げるのは「ミッションクリティカル」だ。

 OCIは、オンプレミスで稼働してきたミッションクリティカルなシステムのクラウドシフトに多数採用されている(図1)。例えば、大手キャリアのKDDIは全基幹システムのOCIへの移行進めている。またサービスのクラウド基盤としても多くのSaaS事業者に採用されている。さらに、政府・地方公共団体におけるガバメントクラウド移行でも、全国1741市町村のうち、富岡市、宇和島市、和歌山市、札幌市などをはじめ多くの自治体に採用されている。

図1:多くの企業のミッションクリティカルシステムをOCIで支えている

 その原動力になっているのが「後発であるがゆえのモダンな設計だ」と三澤氏は説明する。SaaS事業者がクラウドインフラに求める要件は、顧客企業の重要なデータを預かる基盤としての堅牢性・安全性・信頼性、サービス利用者の満足度を左右するパフォーマンス、そしてベンダーとして事業利益に貢献するコスト体系、さらには新たなチャレンジのしやすさなどがあろう。OCIの”モダンな設計”はそれにどう応えるのか。

 OCIのインフラは最初からセキュリティを考慮して設計されており、完全なテナント分離、暗号化、階層型権限管理が実現されている。加えて、DBの自動セキュリティ対策、アクセス制御などデータ中心の多層防御、脆弱性スキャンや自動修復をはじめとする自動化されたセキュリティ管理など、大半の機能が無償提供されている。SaaS事業者は、サービス提供インフラの信頼性・可用性に加え、追加コストなしに堅牢なセキュリティ対策が可能だ。

 また、OCIは2階層の『リーフ&スパイン型』ネットワーク構成になっており、低遅延で高帯域を確保でき、単一障害点も排除される。そのため、アプリケーションのパフォーマンス向上と安定稼働に貢献する。さらに送信トラフィックは10TB/月まで無料だ。「OCIはミッションクリティカルに最適にデザインされている」と三澤氏は説明する。