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世界を変える「10の技術トレンド」2026年版、米VCのペガサス・テックの見立て

田中 克己(IT産業ジャーナリスト)
2026年2月16日

トレンド4:モビリティ

 旅客向けeVTOL(電動垂直離着陸機)の開発から運航サービスまでを一体で進めている米ジョビー・アビエーションや、貨物輸送に特化した大型自律ドローンを開発する米ELROY AIRなどが注目株である。「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOLの市場規模は2023年の14億ドルから2030年には286億ドルに拡大すると予測する。

 2025年11月、米ニューヨーク証券取引所にドローンなどを展開するスタートアップのBETAテクノロジーズが上場した。同社には双日などが投資し、日本で実証実験を開始する。日本のスタートアップにはSkyDriveなどがある。

トレンド5:バイオテック

 インパクトが大きいのは、AI創薬やデジタルバイオ製造、合成生物学、自動化ラボなどである。AI創薬では米ファイザーやアステラス製薬など大手製薬が先行する。一方で、AI技術により新規機能性タンパク質を設計・創出する米Profluentや、AIと機械学習を用いたタンパク質設計プラットフォームを開発する蘭Cradle Bioなどのスタートアップが台頭する。

トレンド6:先端材料と先端化学

 先端材料には、複合材や機能性材料などがある。先端化学には高機能ポリマーや樹脂などの特殊化学品、電池材料、半導体向け化学などがある。こうした材料・化学メーカー向けに生成AI技術を使ったR&D支援のためのSaaS(Software as a Service)を提供する米Citrine Informaticsや、材料開発プラットフォームを開発する米Kebotixが生まれている。

トレンド7:クライメートテック

 脱炭素など環境問題解決に取り組むスタートアップが増えている。だが一方で米トランプ大統領の関心の薄さなどから、投資減速がみられ始めている。

トレンド8:アグリテック、フードテック

 アグリテックでは、精密農業や農業ロボット、農業IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、農業データ解析、スマート農業など、フードテックでは、食品のデジタル化やサプライチェーン最適化、トレーサビリティ、食品工場のDX(デジタルトランスフォーメーション)などの領域が期待される。

 スマート農業では、米John Deereなど大手農機メーカーがデータ分析やロボット開発に取り組む中、スタートアップも活躍する。農業ロボティクスを開発する米Carbon Roboticsは、コンピュータビジョンと深層学習で雑草と作物を識別し、高出力レーザーで雑草を除去する自律型ロボットを開発する。米Four Growersは温室農業の人手不足解消に向け、自動収穫を推進するロボットを開発する。

トレンド9:空間コンピューティング

 2032年までの年平均成長率は18.3%と予測する。大手では、米Appleが「Vision Pro」を空間コンピューティングに位置づけ、業務向けの3D(3次元)ワークスペースとして活用を広げている。マイクロソフトはデバイス単体の競争よりも、現場で使える業務基盤側(クラウド・AI・セキュリティ・業務アプリ)を強みに、空間コンピューティングの実装を支援する。NVIDIAは空間コンピューティングを産業デジタルツイン「Omniverse」の実装市場として捉える。米Metaは「Quest」を軸にVR(仮想現実)の利用者と開発者のエコシステムを形成し、存在感を高めようとしている。

 一方、スタートアップでは、 フィンランド発のVarjoが産業・防衛レベルなどプロ向けXR(複合現実)ヘッドセットを開発・提供する。特に訓練・シミュレーション用途に強く、航空・陸上・海上などのミッションクリティカルな現場をターゲットにする。米Magic Leapは、透過型AR(拡張現実)の技術を開発した。米Campfireは3Dモデルをシーン化し共有できる3Dコラボレーションツールを提供する。

トレンド10:量子コンピューティング

 市場は年平均成長率25.6%を予測する。米IBMやグーグル、マイクロソフトなどが力を入れている中、米Rigettiなどスタートアップが市場開拓に挑戦する。Rigettiは超伝導量子コンピューターを開発するなど、量子プロセサの設計・製造からシステム構築までを手がけるフルスタック型を目指す。米PsiQuantumは光(フォトニクス)方式の量子コンピューターを開発する。

田中 克己(たなか・かつみ)

IT産業ジャーナリスト 兼 一般社団法人ITビジネス研究会代表理事。日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任。2010年1月にフリーのIT産業ジャーナリストに。2004〜2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。2012年10月からITビジネス研究会代表理事も務める。40年にわたりIT産業の動向をウォッチしている。主な著書に『IT産業崩壊の危機』『IT産業再生の針路』(日経BP社)、『2020年 ITがひろげる未来の可能性』(日経BPコンサルティング、監修)などがある。