- News
- 共通
世界を変える「10の技術トレンド」2026年版、米VCのペガサス・テックの見立て
米シリコンバレーに本社を構えるベンチャーキャピタル(VC)のペガサス・テック・ベンチャーズは、運用総額約3000億円、約40のファンドを運用する。同社は2026年に注目すべき技術トレンドを、どう見ているのだろうか。このほど来日した同社CEO(最高経営責任者)のアニス・ウッザマン氏の講演から、同社が挙げる10の技術トレンドと、各領域で期待されるスタートアップを紹介する。
「2026年は、(以下に挙げる)10のテクノロジーが実験から実行へ移る転換点になる」--。米ペガサス・テック・ベンチャーズのアニス・ウッザマンCEO(最高経営責任者)は、こう指摘する(写真1)。実行段階になれば、オペレーションモデルなど競争環境も一変する。これらのテクノロジーを見極め、リスクを恐れず果敢に導入する企業が、さらなる成長を遂げられるのだろう。以下、それぞれを紹介する。市場規模の予測などは、いずれもペガサスによるものである。
トレンド1:エージェンティックAI
米JPモルガンCEOのジェイミー・ダイモン氏が「AI(人工知能)技術への投資を進めなければ取り残される」と発言したように、企業のAI導入は待ったなしの状況にある。その中で最も注目を集めるのがエージェンティックAIだ。
エージェンティックAIは、人の関与を最小限に、計画や意思決定など複数タスクを自律的に実行できるAIシステムである。プロンプトの入力を待って動作する生成AIシステムとは異なり、質問に答えるだけでなく、目的に向かって自ら動作する。世界の市場規模は2024年から2025年に約60億〜70億ドルになり、2020年代後半には数百億ドルに成長すると予測する。
2028年までには企業向けソフトウェアの33%に搭載され、日常業務の約15%が自律的に判断されると予測する。業種別では、エンタープライズIT/オペレーションが最も多い35%。それに金融サービスの20%、テック/ソフトウェア開発の20%、小売り・サプライチェーンの15%、ヘルスケア・物流の10%が続く。
関連ツールは、マイクロソフトやAWS(Amazon Web Services)、グーグルなどの米大手だけではなく、MoveworksやCrewai、Seekr Technologiesなどの米スタートアップやカナダCognosys AIなどが開発している。日本では、富士通やNEC、NTTデータといった大手のほか、エクサウィザーズやJAPAN AI、AI SHIFTなどのスタートアップが関連ツールを提供する。
トレンド2:ロボティクスなどのフィジカルAI
人型ロボットの研究・開発は、日本が進んでいた時期もあった。だが、米中の企業がAI技術をテコに実用化を劇的に前進させた。2026年1月に開催されたデジタル技術見本市「CES2026」では、米AMDのリサ・スー会長兼CEOが「人型ロボットなどフィジカルAIが次なる大きなトレンドだ」と述べれば、米NVIDIAのジェンスン・フアン共同創業者兼CEOは「AIロボティクスは本格的な普及への転換期に入った」とした。
24時間365日働く人型ロボット市場で、先行するスタートアップの1社が、物流や倉庫、製造現場向け人型ロボットを開発する米Agility Roboticsだ。製品販売を開始し、箱の運搬やピッキングなど反復作業の自動化など、物流企業などの労働力不足の解消策として注目を集めている。
米テキサス大学オースティン校の「Human Centered Robotics Lab」から2016年にスピンアウトしたApptronikも、物流や製造現場などで搬送やピッキングなどの反復作業をこなす人型ロボットを開発する。
米テスラや米Figure AIなども人型ロボットの開発に取り組んでいる。テスラの参入により市場は一気に拡大するとみられ、人型ロボットの市場規模は、2024年の20億ドルから2035年に380億ドルと、年平均28%の成長率を予測する。業種別では製造が34%、物流・倉庫が32%、家庭が22%、医療が11%である。
なぜ、人型ロボットなのかについてウッザマン氏は「机もキッチンも人間のために作られているからだ」と説明する。例えばFigure AIなどの家庭向けロボットの身長は約6フィート(約182センチ)もある。ここに日本企業のチャンスがある。「日本人は、それよりも10センチくらい身長が低いロボットを求めるだろう」(同)からだ。
「ロボティクスは中国が進んでいる」との声に対してもウッザマン氏は否定する。「知能を担うソフトウェアへの投資額が大きく違う」(同)のが、その理由である。
トレンド3:AIハードウェア、半導体、アクセラレーター
NVIDIAは2025年12月、米Groqと200億ドルの契約を結んだ。GrogはAI推論処理に特化した独自チップとプラットフォームを開発するAIハードウエアのスタートアップである。推論専用アクセラレーターにより、従来型GPU(画像処理装置)に比べ低遅延かつ高速なAI推論を実現する。フィジカルAIのソフトウェア開発にも適するという。
また米OpenAIは2026年1月14日、米CerebrasとAI計算能力を確保するための契約を100億ドルで結んだと発表した。NVIDIA依存を減らす流れを加速させるためでもある。Cerebrasは、シリコンウェハー全体を1つの巨大チップとして使用する独自のアーキテクチャー「Wafer Scale Engine(WSE)」を採用し、従来型GPUを大きく上回るAI計算性能を実現する。ちなみに、同AIチップの大きさは日本の大皿くらいである。
一方、半導体市場で苦戦する米インテルはチップからAIモデルまでのフルスタックのAIプラットフォームを開発する米SambaNovaの買収計画を進めている。
