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工学院大学、スマートファクトリーを支える生産現場の次世代リーダーを育成
工場の全体を管理するOEE教育で経営視点を養う
加工技術の習得に加え、工具寿命や故障診断、生産効率、熟練者ノウハウの継承など、工場運営のための総合的な教育も実施する。そのために学生は、生産管理ソフトウェア「SMOOTH MONITOR AX」(ヤマザキマザック製)などを使って、生産現場の効率を定量的に把握するOEE(Overall Equipment Effectiveness:設備総合効率)を学ぶ(図2)。
OEEは(1)稼働率(Availability)、(2)性能(Performance)、(3)品質(Quality)の3要素を掛け合わせて算出する。稼働率は、就業時間に対して工作機械が実際に動いている自動運転の割合を指す。学生は「刃物が実際に削っていない『非切削時間』をいかに減らすかを検討する」(濱根氏)
性能は、切削送り速度を早めるオーバーライドの割合を監視し、理論値に対する稼働効率を指す。品質は、全加工数に対する良品の割合を指す。学生は精度検査の結果を製造工程にフィードバックする仕組みを学ぶ。
これらのデジタル教育の一方で「1年生段階での“アナログ体験”を重視する」(濱根氏)という。具体的には、手書きの製図や、手動の汎用旋盤による切り出し・面出し、鋳造などを実習する(写真3)。講師には、東京精密やソニー、日野自動車などの企業出身のエンジニアを招き「現場の知見を教育に反映させている」(同)という。
アナログ体験を重視する理由を濱根氏は「デジタルの世界に入る前に、金属を削る匂いや熱、異常時の手の感触を体に覚え込ませる必要がある。それらを五感で察知できなければ、高度な自動化設備は使いこなせない。“どんくさい実体験”があるからこそ、デジタルな環境でのシミュレーション結果の妥当性を肌感覚で判断できるようになる」と説明する。
企業が求める主体性と実行力をものづくりの競技やコンテストで養う
工学院大学の取り組みは、学生の就職という“出口”を見据えたものだ。新卒採用市場における就職活動の現状を濱根氏は「企業は採用人数の確保よりも“学生の質”を重視する傾向にある。採用担当者が学生に求める資質には“主体性”や“実行力”が挙がる」と説明する。
企業が求める主体性や実行力を養うためには「自ら設計・加工し、動くものを完成させる必要がある」と濱根氏は考える。そのための実践の場として、ソーラーカー競技や学生フォーミュラ、ロボットコンテストなどの課外活動を位置付ける(写真4)。
濱根氏は「シミュレーションと現実のかい離を埋めるプロセスこそが、エンジニアとしての真の自信と、企業が求める主体性を育む」と強調する。次世代人材を育成する取り組みは「大学内に留まらず、付属の中・高生にも、大学生が講師になってデジタル設計や溶接技術を教えている」(同)という。


