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工学院大学、スマートファクトリーを支える生産現場の次世代リーダーを育成
工学院大学が、スマートファクトリーの構築・管理を担う次世代リーダーを育成する実践型教育プログラムを展開している。設計から製造、工場運営までを対象にしたデジタル環境を構築し、少人数でも生産現場をマネジメントできるようにするのが目標だ。2026年3月16日に東京・八王子で開催したキャンパスツアーで取り組みを説明した。
「今の学生が60歳になるころに労働人口の減少は極致に達する。その時に日本の製造業を支えるとともに、自らの子供世代を教育できるだけの能力を養っておかなければならない」--。工学院大学 工学部 機械システム工学科 教授で、同大学の「ものづくり支援センター」のセンター長を務める濱根 洋人 氏は、製造業における人材面での危機感をこう説明する(写真1)。
日本の総人口は2070年度に2020年度から約4000万人減少すると予測されている。これは、東京・神奈川・大阪・愛知の4都県が消滅する規模に相当する。濱根氏は「働く世代が激減する“逆ピラミッド型”社会の到来を見据えれば、日本の製造業が直面する労働力不足と技術承継の断絶を打破するには、高度なものづくりを維持できるリーダー人材の育成が急務だ」と指摘する。
そのために工学院大学が取り組むのが、文部科学省の教育事業として2023年に始動させた、デジタル技術を中核に据えた教育プログラムである。スマートファクトリーの構築・管理を担う次世代リーダーの育成が目標だ。人口減少社会では「少ない人数で無人の工場を管理する能力が不可欠になる」(濱根氏)ためだ。
そのため「図面を描くだけの人材ではなく、自律的に課題を見つけ、デジタルと物理の両輪で解決策を具現化できるリーダーこそが、2070年の日本を支える。工学院大学は、そのための拠点であり続ける」と濱根氏は強調する。
新宿と八王子の両キャンパスをつなぎ工場の遠隔監視・管理を学ぶ
同プログラムでは、新宿キャンパス(東京都新宿区)をオフィスに、八王子キャンパス(東京都八王子市)を工場に位置付け、オフィスから工場設備の稼働状態や加工工程を遠隔操作・管理するシステムを構築している(図1)。濱根氏は「遠隔操作の体験だけでなく、物理的な距離を超えて工場を管理・運営できる次世代のマネジメント能力を養うための実践的な環境だ」と説明する。
遠隔監視・管理対象になる八王子キャンパス側には、旋盤やターニングセンタのほかに、複雑な形状を5つの軸を同時に制御して削り出す同時5軸マシニングセンタの「VARIAXIS C-600」(ヤマザキマザック製)や立形マシニングセンタ「ROBODRILL α-D21LiB5」(ファナック製)などを置いている(写真2)。
プログラムでは、学部2年生の段階で同時5軸マシニングセンタの操作を習得させる。一般には「大学院生や熟練技能者が扱う領域」(濱根氏)だが、それを早期に習得するのは「研究室に配属される学部3〜4年生からでは遅い。就職して即戦力になるには学部2年生での完遂が不可欠だ。就職活動の早期化に対応するためにも、このタイミングが正しいと考えている」(同)からだ。
同時5軸マシニングセンタの習得は3つのステップで進める。
ステップ1=NC(Numerical Control:数値制御)プログラムの基礎 :NCのコマンド、座標系、工具長補正など工作機械を動かすための基本的なプログラミング言語を習得する
ステップ2=3軸マシニング加工 :2D(2次元)・3D(3次元)の加工プログラムを作成し、実際の工作機械を使ってアルミ材などを削り出す。加工プログラムの作成には、クラウド型CAD(コンピューターによる設計)/CAM(Computer Aided Manufacturing:コンピューターによる製造)ソフトウェア「Autodesk Fusion」(米Autodesk製)を使用する
ステップ3=5軸マシニング加工とシミュレーション :割り出し5軸や同時5軸制御を用いた切削技術を学ぶ。刃物の先端速度がゼロになる中心部(周速ゼロ点)を避けて削る手法や、複雑な曲面の仕上げをシミュレーションと実技の両面で習得する


