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製造業でのフィジカルAI利用への取り組みを強化、AWSジャパン

上田 羽純(DIGITAL X 編集部)
2026年5月29日

製造業におけるフィジカルAI(人工知能)をテーマに、AWSジャパンが記者説明会を2026年5月21日に開催。産業技術見本市「Hannover Messe 2026」(主催:Deutsche Messe、2026年4月20日~4月24日)での出展内容を中心に同社の取り組みを説明した。

 「フィジカルAI(人工知能)は、産業構造の転換点になると見られており、転換スピードそのものも加速している」--。アマゾンウェブサービス(AWS)ジャパン 技術統括本部 ストラテジックエンタープライズ本部 本部長の岡本 京 氏は、フィジカルAIの現状を、こう説明する(写真1)。

写真1:AWSジャパン 技術統括本部 ストラテジックエンタープライズ本部 本部長の岡本 京 氏

フィジカルAIは産業ロボットの柔軟性を高める

 フィジカルAIを岡本氏は「ハードウェアとソフトウェアが知覚・理解・推論・学習を統合し、物理世界と相互作用するシステム」と定義したうえで「フィジカルAIによって運用されるハードウェアには、産業用ロボット、人型ロボット、自動運転車両、ドローンなども含まれる。これらが、あらゆる領域を変えるという期待値が高まっている」とする。

 米Amazon.comは自社施設において、柔らかい物体を扱えるロボット「Vulcan(ヴァルカン)」や、仮想空間上でのライン組み換えシミュレーションといった新技術の開発や導入を進めている。AWSとしては「これらの実践から得たナレッジを生かして顧客を支援する」(岡本氏)という。

 岡本氏は、既存の産業用ロボットとフィジカルAIの違いを、こう説明する。

 「動作を事前にプログラムする既存ロボットは、高精度かつ高速に安定して反復動作できる強みがあり、今後も使われ続けるだろう。しかしプログラムに時間が掛かるためにライン変更に対応しづらい、想定外の状況や環境変化に対応できないなどの弱点がある。他方フィジカルAIは、機械学習ベースのモデルが状況を判断し、柔軟にタスクをこなせる。靴ひもを結ぶといった複雑でルール化が困難な動作も実現できるなど、従来のロボットの弱点を解決できる」(図1)。

図1:従来のロボットとフィジカルAIの比較

 フィジカルAIの発展要因として岡本氏は次の4点を挙げる。(1)生成AIのアルゴリズム「Transformer」のロボットへの応用、(2)物理法則を模倣する世界モデルの発展による現実とシミュレーションのかい離の縮小、(3)より軽量で高精度な素材によるコストの低下、(4)大手産業ロボットメーカーによるソフトウェアのオープン化、である。

 AWSでは現在「フィジカルAI開発支援プログラム」を展開している。技術や資金の提供、コミュニティ作りなどを実施する。

Hannover Messeには『本当に現場で使える』形を出展

 AWSジャパン 自動車・製造事業統括本部 インダストリースペシャリスト&ソリューションズAPJ本部長の川又 俊一 氏が、「Hannover Messe 2026」(主催:Deutsche Messe、2026年4月20日~4月24日)の出展状況を説明した(写真2)。

写真2:AWSジャパン 自動車・製造事業統括本部 インダストリースペシャリスト&ソリューションズAPJ本部長の川又 俊一 氏

 今年のHannover Messeの全体テーマは「産業AI」。AWSは基調講演において「産業AIを大規模に、意味のある形で展開する必要があると発信した」(川又氏)ほか、種々のデモを展示した。

 展示テーマは大きく(1)フィジカルAI、(2)製造プロセスの全体を管理するエージェンティックAI、(3)物理的な作業を減らしフィジカルAIの性能を高めるシミュレーションエンジニアリング、(4)欧州主権クラウド(ソブリンクラウド)の4つである。

 川又氏は「『本当に現場で使えるんだ』という現実感を持ってもらえるよう、Amazonグループで実際に使っている技術を例に出展した」とする。具体的には(1)製品設計・開発、(2)保守・サービス、(3)生産・サプライチェーンマネジメントの3ブロックに分けて製品/サービスを展示した。

 フィジカルAIを組み込んだ生産現場のデモでは、アーム型産業ロボットや自動搬送ロボット、人型ロボットなどが混在するデモ「AI-Driven Product Journey」を出展した(図2)。各装置が協働して刻印入りメタルコースターを作る一連の流れを示したものである。

図2:AI-Driven Product Journeyデモの全体像