• News
  • 共通

実用化に向け急進する中国の人型ロボットの今、NRIの専門家が解説

田中 克己(IT産業ジャーナリスト)
2026年7月7日

中国が、人型ロボット(ヒューマノイド)の実用化を急ピッチに進めている。AI(人工知能)技術とEV(電気自動車)やスマートフォンなどで培った生産ノウハウを生かす。中国の人型ロボット動向に詳しい野村総合研究所(NRI)未来創発センターの李 智慧 氏の講演から、中国での実用化への取り組み状況と、日本企業への提言を紹介する。

 「これまでの産業ロボットは、工場内という安全な環境下で、特定の単純作業を正確に繰り返す効率化ツールに過ぎなかった。しかし、ロボット基盤モデルをはじめとするAI(人工知能)技術の進化がロボットに自律的な能力を与えた」--。野村総合研究所(NRI)未来創発センター 未来社会・経済研究室 チーフエキスパートの李 智慧 氏は、こう指摘する。

 結果「人間と同じ空間で状況を認識し、自ら判断して複数のタスクをこなす『汎用型ロボット』の社会実装が現実になってきた」(李氏)という。ロボットの出荷台数は2025年の約2800台が2026年には約2万台と一気に7倍に成長し、量産体制を整えつつある(図1)。

図1:2025年の人型ロボットの出荷台数における中国の割合(左)と、その出荷量

 2026年の春節特番(中国版紅白歌合戦)には、Magiclab(魔法原子)、NoetixRobotics(松延動力)、Unitree(宇樹科技)、Galbot(銀河通用機器人)の4社のロボットが側転宙返りやガラス片の回収、洗濯物を畳むなどの動きを披露した。中でもUnitreeなどの人型ロボットは「高度な運動性能と群制御などを実現し、2025年に比べて技術面の進展が顕著だった」と李氏は分析する。

 人型ロボットのハーフマラソン大会には海外からを含む300体超が出場し、優勝タイムは2025年の2時間40分42秒が2026年は50分26秒と3分の1になった。環境認識や自律走行性能などの向上により、複数体が人間の世界記録を突破した。ただ「実用化には課題が残る」(李氏)とはいう。

 またロボットメーカーだけでなく、家電や自動車など異業種からの市場参入も相次いでいる。例えば、家電メーカーの中国Mideaは6本腕・車輪型のロボットを開発している。

物流拠点やラストワンマイル、無人店舗への導入が始まる

 活用が進んでいる領域の1つが物流拠点の自動化である。「独身の日(毎年11月11日)」など大規模キャンペーンが実施される期間の宅配便の取扱量は爆発的に増加し、ピーク時には1日当たり7.7億件に達する。そうした中、中国郵政は物流現場に北京のスタートアップROBOTERA(星動紀元)が開発する人型ロボットを導入し、荷物の自動仕分けを実現させた。

 それまでも搬送の自動化は進めていたものの、仕分け工程は人手に頼っており、ピーク時の処理が遅れ気味だった。そこで、素材やサイズ、色の異なる荷物を正確に仕分ける人型ロボットを導入し、コンベアで流れてくる荷物を配送先コンテナに運ぶまでを自動化した。「作業効率は人の85%に相当し1時間当たり最大1200件をこなせる」(李氏)という。

 ラストワンマイルへの活用例もある。自動運転向けセンサーのLiDAR(light detection and ranging)などを開発する大手部品メーカーの中国RoboSense(速騰聚創)が中国宅配事業大手のMeituan(美団)と提携し、ドローンとロボットを組み合わせた実証実験を展開している。

 実験では、注文を受けた荷物をドローンがマンションなどに設置されたステーションに届ける。その荷物をロボットが受け取って梱包を解き、自らエレベータに乗って顧客の玄関先まで届ける。開梱した段ボール箱は折り畳み、リサイクルボックスに回収する。李氏は「完全自動の未来の配達インフラのひな形だ」と話す。

 小売店舗の事例には、Galbotが運営するコンテナ型無人店舗がある。同店舗の大きさは9平方メートル。北京や広州など約30都市に約150カ所が展開されている。店舗にはロボット店員が常駐し、商品のピッキングからホットスナックの提供までを担う。「地価の高い観光地や人口減少地域における店舗運営の1つの解として注目されている」(李氏)