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【VIVATECH 2026】フランスとインドが進めるスタートアップ育成策の成果

「技術主権」と「デジタル民主化」を推進

宇江山 貴紀(ジャーナリスト)
2026年7月9日

欧州最大級のスタートアップ関連イベント「VIVATECH(ビバテック)2026」が2026年6月17日から20日にかけて、仏パリのポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場で開かれた。第10回を迎えた今回は会場規模をさらに拡大。そこではフランスの「技術主権」とインドの「デジタル民主化」という2つの強烈な国家意思と、それらによるスタートアップ育成構想が交錯した。両国の政府主導によるスタートアップ政策が、どんなインフラを形成し、いかなる果実を結びつつあるのだろうか。

写真1:「VIVATECH 2026」の会場を並んで視察するインドのモディ首相(中央左)とフランスのマクロン大統領(同右)(写真提供:VivaTech 2026)

フランス:マクロン政権がパリを世界のイノベーション首都へ

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は就任以来、自国のスタートアップエコシステムを「FlenchTech(フレンチテック)」と呼び、その育成を国家戦略として強力に推し進めてきた。欧州最大級のスタートアップ関連イベント「VIVATECH 2026」において同大統領は、その成果を次のように誇示した。

 「VIVATECHは、明日を発明しようとする全ての人々を集結させることで、パリをイノベーションと、テクノロジー、スタートアップのための世界的首都に押し上げた。2026年のエディションは、過去9年間の単なる祝賀ではなく、これから登場するイノベーションに向けた可能性に満ちた、新たな10年の幕開けである」

 この言葉の通り、フランスにおけるイノベーション推進策は着実に実を結んでいる。官民一体のムーブメントを語る上で欠かせないのが、インフラ面での圧倒的なバックアップ体制である。パリに2017年6月にオープンした世界最大級のスタートアップ支援施設「ステーションF」が、それだ。フランスの通信大手Iliadの創業者である実業家グザヴィエ・ニール(Xavier Niel)氏が私財を投じて開設したステーションFは、エコシステムの心臓部として数多くの起業家を育んできた。

 政府のトップセールスも凄みを増している。VIVATECH会期中の6月18日の夜には、大統領府であるエリゼ宮殿において大規模なディナーパーティーを開催した(写真2)。世界の起業家やトップ投資家、政財界の要人らが招かれ、フランスのビジネス環境の魅力をトップが直接アピールする場になった。国を挙げての手厚い支援姿勢が、現在の繁栄を支えているのである。

写真2:フランスの大統領府エリゼ宮殿で開催されたパーティーの記念写真(Xへのマクロン大統領の投稿から)

米巨大ITから脱却し独自のオープンソースも構築

 エコシステムの成熟に伴い、フランスのスタートアップを取り巻く金融環境も新たなフェーズに入っている。2026年第1四半期のフランスにおけるスタートアップの資金調達額は27億3000万ユーロに達した。「大いなる集中」と呼ばれる変革期の中で、イノベーションの構造そのものが大きく再構築されている。

 とりわけ重要な転換点は、フランス政府が「技術主権(Sovereignty)」の確立に向けて大きく舵を切っている点だ。長年依存してきた米マイクロソフト製の基本ソフトウェア(OS)「Windows」からの脱却を図り、政府独自のオープンソースアプリケーションの構築を進めるなど、米国発の巨大IT企業(ビッグテック)との決別という大胆な施策に打って出ている。

 これに連動するように、防衛テクノロジー分野での取引も急増しており、スタートアップ政策が国家の安全保障と直結する戦略的な投資体制へと変貌を遂げている。

 しかし一方で、マクロン大統領がテクノロジー分野での成功を華々しくアピールする裏では、エコシステムの創業者や投資家たちの間で「マクロン退陣後の2027年以降はどうなるのか」という不確実性への懸念も浮上し始めている。