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デジタル時代の経営戦略、ブラザー工業、日清紡の経営トップが挙げる経営判断に不可欠なデータとは
「EXECUTIVE AGENDA 2019」パネルディスカッションより
グローバルに活動するブラザー工業 代表取締役会長の小池 利和 氏と、日清紡ホールディングス 代表取締役社長の村上 雅洋 氏が、2019年7月17日に開かれたビジネスセミナー「EXECUTIVE AGENDA 2019 Beyond 2020〜日本企業の成長戦略〜」のパネルディスカッションに、KPMGコンサルティング代表取締役社長 兼 CEOの宮原 正弘 氏とともに登壇し、企業の成長のためのM&A(企業の統合・買収)やデータ活用について語った。モデレーターは、東洋経済新報社 常務取締役 執行役員ビジネスプロモーション局長の田北 浩章 氏が務めた。(文中敬称略)
――ブラザー工業、日清紡ホールディングスともにM&Aをうまく実施している。買収、あるいは事業譲渡においては何を基準に判断しているか。
小池 利和 氏(以下、小池) ブラザー工業 代表取締役会長のブラザー工業 代表取締役会長の小池 利和です。買収は、簡単に言うと企業に夢を持たせるものでなければいけない。
つまり事業の将来性、相乗効果を考えて判断することが基本だ。そこは各社同じだと思うが、当社の特徴を加えるとすれば、プリンターや複合機のビジネスは本体を販売するだけでなく、そのあとにトナーやインクなどの消耗品が売れるため、事業環境が変わっても業績へのインパクトが出るまでに時間がかかることである。
これはいいことのようだが、逆に言うと、気がついた時には手遅れになりかねないということでもある。そのため買収に関しては、少し先の事業環境を考える必要がある。たとえば2015年に買収した英国の産業用プリンティング機器メーカーDominoの場合、金額が約1900億円と巨額だったため多くの指摘を受けたが、将来を考えると「このタイミングを逃してはいけない」と決断した。
――日清紡は買収だけでなく事業譲渡も実施しており、難しい決断を必要とする。特に、それまで一緒に働いてきた従業員に対して、どう説明するのか。
成長できないノンコア事業で働くことは従業員も不幸
村上 雅洋 氏(以下、村上) 日清紡ホールディングス 代表取締役社長の村上 雅洋です。事業譲渡といっても単純に切り出す、手放すということではない。近年譲渡している事業は当社にとってのノンコアの事業だった。実力は高くても、ノンコアということで潤沢な投資がされない、つまり成長できない状況だった。
しかし、その事業をコアにしている企業なら、大きく投資できるし成長させられる。成長できない組織にいる従業員は幸せとは言えない。その事業部門で働くなら、コアとして取り組んでいる企業で働けたほうがいい。
当然、従業員の雇用は守ってもらう約束はする。譲渡する側と受ける側、双方にベストな形を作ることが大事だ。事業体や、顧客にとってベストの選択をしていくことが、自社にとっても一番いい結果になるはずだと考えて事業を再編している。
――M&Aに対する経営者の姿勢に、日本企業と欧米企業では差があるのか。
宮原 正弘 氏(以下、宮原) KPMGコンサルティング 代表取締役社長 兼 CEOの宮原 正弘です。欧米は事業全体へのインパクトが大きな買収が目立つ。対して日本は既存事業に大きく影響する買収は少なく、保守的と言える。
もっとも海外の大企業では経営者が外部から招聘されている場合も多く、常にビジネスモデルを変えることで収益を出そうというマインドセットがある。なので日本が“弱腰”と決めつけることはできない。