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デジタルトランスフォーメーションに向けた“技術と経営の融合”は起こるのか

戦略討論会 ~ 今求められる「技術と経営の融合」とは? 実践すべきデジタル戦略とアプローチを激論!~ より

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2019年9月3日

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進において“技術と経営の融合”は起こるのか。そんな問題意識を持つイベント「戦略討論会 〜今求められる「技術と経営の融合」とは?実践すべきデジタル戦略とアプローチを激論!〜」(アーサー・ディ・リトル・ジャパンとクリエーションラインの共催))が2019年8月7日に東京・芝浦で開かれた。登壇したデンソーの成迫 剛志 氏、クリエーションラインの安田 忠弘 氏、アーサー・ディ・リトル(ADL)ジャパンの原田 裕介 氏のポジショントークおよびパネルディスカッションでの内容を紹介する。(文中敬称略)

イノベーションは過去とは非連続に起こす

デンソー 成迫 剛志 氏(以下、成迫) デンソー技術開発センター デジタルイノベーション室長の成迫です。

写真1:デンソー技術開発センター デジタルイノベーション室長の成迫 剛志 氏

 自動車業界は今、「CASE(Connected:つながる、Autonomous:自動運転、Sharing:共有・利用、EV:電動化)」、そして「MaaS(Mobility as a Service:移動としてのサービス)」により大変革期を迎えています。クラウドやICTなしに新しいテクノロジーを生み出せないなかで、未来のモビリティ社会はITとの融合が不可欠です。

 テレビやオーディオ、電話はすべて、ソフトウェアやコンテンツ、プラットフォームの問題に変わってきました。ハードウェアはただのコモディティです。クルマもそうなります。

 イノベーションは、現在からの進化の延長線上にはなく、全く異なるところから始まります。そこで2017年にデジタルイノベーション室を作りました。アジャイルで内製することがスピードアップに貢献します。第3者に依頼するためのRPF(要求仕様書)を作ってはいられません。1つのプロジェクトが1つのスタートアップとして機能するような組織にしたいと考えています。

 過去と非連続なイノベーションでは、従来システムは関係ありません。せいぜい月次データをCSVで渡せばいいくらいです。そこはいったん忘れ「DXのために、どうするか」という視点で取り組んだほうが良いですね。

自律型でイノベーションを生み出せるチームを目指す

クリエーションライン安田 忠弘 氏(以下、安田)  クリエーションラインCEOの安田です。当社はアジャイル開発の支援サービスや各種ツールのサブスクリプション事業などを手がけています。特に、クラウドネイティブな技術、すなわちコンテナやマイクロサービスなどに力を入れています。

写真2:クリエーションラインCEOの安田 忠弘 氏

 そうしたクラウドネイティブな技術を組織として活用するために目指しているのが、自律型でイノベーションを生み出せるチーム作りです。

 イノベーションを生み出せるチームを作るには、経営課題の解決と現場改革を両輪で回していかねばなりません。また多様性も新しい価値を創り出す力に転換できなければなりません。

 これらを実現するには、コミュニケーションを取ることに加え、コミュニケーションの質を上げることが大切です。そこで当社が実践しているのが“雑談”です。

 業務時間内で雑談のための時間を取っています。仕事の話はNGです。知らない人と雑談するのは最初は難しいのですが、繰り返すと互いの理解が深まり、チームをまたがったコラボレーションが可能になります。すると会話の室も高まり、新たなサービスを作れるようになるのです。

 変化は、技術だけでは起こせません。会社の文化を変革し、それを継続することが重要です。