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CDOの“次の一手”、ブリヂストン、ヤマハ、SOMPOのDX推進戦略

「CDO Summit 2019」パネルディスカッションより

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2020年3月11日

儲かるかわからない世界の意思決定は苦手な会社が多い

――目標を全社で共有するにはどうすればよいのでしょう。

三枝 :DXで目標を決めても、それぞれのミッションに具体的に落とし込んでいかなければなりません。儲かるかどうかわからない世界の意思決定は苦手な会社が多いでしょう。

平野 :日本の会社はトップが決断しても、中間管理職の社員が動かして実行に移すため、そこが難しいところです。インテルはトップダウンの文化がとても強く、トップの指令が現場まで伝達される仕組みができあがっていました。中間管理職の人も動かざるを得ないシステムやKPI(重要業績評価指標)がありますから、CEO(最高経営責任者)が決めた方向性が全社に浸透します。部長、課長、現場のそれぞれの判断を尊重する日本の企業は、トップダウンのフレームにはなっていません。

――社内のマインドセットはどのように改革していますか。

三枝 :本社のコーポレート部門でまずやってみて、総論として賛成してもらいっています。

平野 :目標を決め、どうすればよいかを徹底的に議論しています。「私の意見に反対するときは対案も出してください。対案がないならやりましょう」という形で地道に浸透させていくしかありません。世界中で5万5000人の社員がいますから、なかなか一斉というわけにはいきません。上のほうから順に浸透させています。

三枝 :中間管理職のマインドセットについて正解を持っているわけではありませんが、KPIを変更することは重要です。「あなたのミッションはこれで」KPIはこれです」とすれば会社員として頑張るのは自然で納得がいくことです。

 ブリヂストンは製造業です。ビジネスの最前線の人にデジタルやテクノロジーを意識してもらうのと、研究開発を担当する技術スタッフに商売を意識してもらうのと、どちらがよいのかを考えています。分析ができる人にビジネスを教えるような人材活用がうまくいっていますね。

――DXに取り組む方々へのメッセージをお願いします。

三枝 :DXはパートナーとのエコシステム作りが大切です。一社だけでよいビジネスができるわけではありません。ぜひブリヂストンを、そういう仲間に入れてください。

平野 :日本と海外の製造業では違うところがたくさんあります。ものづくりに関しては海外にひけを取らないといった強みも感じていますが、社内にいるとそれがわかりません。これだけモノを大量に生産して品質管理ができているのですから、ここにデジタルの力を加えてもう一段上げることは必ずできます。皆さんが持っている強みを、デジタルを活用してさらに上げることを考えてください。

ディスラプションで「保険のない世界を目指す」--SOMPOホールディングスの楢﨑 浩一CDO

 保険業界はデジタルディスラプション(デジタル破壊)の最先端にいます。SOMPOホールディングスのコンセプトは「保険のない世界を目指す」ことです。保険は「もしものことがあったら大変だから入る」もの。もしものことが起きない安心・安全な社会になれば“転んだあとの杖”となる保険は不要です。SOMPOは人々を転ばせないサービスを提供するようになっていきます。

 注力しているテーマは防災・減災です。災害が起こっても被害を大きくしないことが大切で、そのためにデジタル技術が活用できます。これが保険会社としての“ど真ん中”の役割と言えます。次が健康でデジタルヘルスです。好んで病気にかかりたいという人はいませんし、入院が楽しみだという人もいません。病気や怪我を未然に防げれば素敵な話ですね。

 何でもDXと名付ければよいという“水戸黄門の印籠”のような状態になっています。ですが、言葉の意義を考えないといけません。「D(デジタル)」ではなく「X(トランスフォーメーション)」が大切です。企業があるべき姿になればもっと儲かりますし成功します。そこにデジタルという触媒があるだけです。

 SOMPOと米国でデータ解析ソフトウェアを手がけるスタートアップ企業のパランティアテクノロジーズで新しい会社を作ることになり、そのCEOを私が務めることになりました。このデータ分析プラットフォームを使って、日本企業を元気にしたいと考えています。あらゆる産業のあらゆる企業にベネフィットとして提供できるでしょう。

 CDOにとって2020年は大切な年です。各社のDXが加速しますし、オリンピックイヤーということでデジタルプラクティスが花開きます。企業戦略において節目となる年です。CDO同士、声を掛け合っていきましょう。