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CDOの“次の一手”、味の素、東京海上、ストックマークの共創戦略

「CDO Summit 2019」パネルディスカッションより

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2020年3月12日

社会課題の解決に共創は不可欠

――他社と連携してビジネスを生み出す、いわゆる共創は必要でしょうか。

福士 :一社で社会的課題を解決するのは無理です。社会コストが上がってしまいます。味の素1社、1つの自治体、1つの病院では、とても解決できません。だから共同体の意味があります。

:医療など保険セグメントの広がりなど、いろいろと考えています。今の保険は事故が起こった際に適用されますが、それを事故が起こった瞬間に解決できないかなどを検討しています。そうなると社内だけでは解決できないため、スタートアップ企業と組むことで可能にならないかと考える。当社では、そのためのラボを世界中に作り人材を募集しています。

福士 :味の素も、いろいろな企業と共創しています。さまざまなシンポジウムを見ているだけでも食・健康・医療などの分野で成長していることがわかります。環境やITは各社で異なりますし社会的課題もあります。積極的に参加して取り組んでいくしかありません。

:誤解を恐れずにいえば、今は大企業が選ばれる立場にあるのではないでしょうか。ほどよく投資してくれる国内企業は少なく、海外の企業のほうが多い。「なぜ当社と組むのか」というきちんとした理由を抽象化し、組む相手に自分の魅力を伝えていくことが大切です。

福士 :共創はスケーラビリティーとインパクトの両面で大切です。参加するにあたっては独自性がないと意味がありませんし、すべてをオープンにするわけにもいきません。クローズドな知の集約は大切です。異なる会社のピースが合わさって、1 + 1が10や20になるのがデジタル時代の加速だと思っています。

データ活用は環境整備以前に目標設定が重要

――データ活用については、どのようにお考えですか。

:デジタルデータの活用は大事です。ただし、データを集めることが目標ではありません。それで何をしたいのかを確認することが大切です。データは、それ整備し使えるようにするだけでも、かなりの予算が必要です。何に対する費用なのかをはっきりさせる必要があります。

 自動車保険を例にとれば、保険の更新率は約95%であり、10〜20年も継続している顧客が数多くいます。その間に、車を乗り換えたデータが残ります。データサイエンティストは「そのデータが使えるのではないか」と言いますが、どのようにビジネスに活かすかで話が行き詰まります。

:ストックマークでは「非構造データの95%を使えるようにしましょう」という目標を立てて進めています。これからはデジタルトランスフォーメーション(DX)も当たり前になっていきますが、デジタルデータで何をするのかを決めるのは大変です。

――DXに取り組む方々に推進のポイントをお伝えください。

:インターネット上には、さまざまなデータがあり、少し新しい程度のことは誰かがすでにトライしています。それを意識して徹底的に真似ることも大切です。 スタートアップや海外の先進事例を徹底的に真似するという選択もありだと思います。

:東京海上でも、デジタル戦略のコンセプト作りは2015年に始めましたが、2018年まで右往左往しました。途中で悩みもしましたし失敗もたくさんしました。そういう状況になっても、ぜひ前進を続けるべきです。

福士 :企業変革では「目的は何か」というコンセンサスを作ることが大切です。それが定まれば、さまざまなテクノロジーを使って、これまで見えなかったものが見えるようになります。見えないもの、足りないものを補強し合える体制を作って進めたいですね。