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社会を幸せにする人間中心のテクノロジーとは【後編】

SXSW 2020 バーチャルパネルセッション「Robotics for Well-Being」より

野々下 裕子(ITジャーナリスト)
2020年4月28日

「Robotics for Well-Being(幸福のためのロボット工学)」は、新型コロナウィルスにより中止になった「SXSW (South by South West/サウス・バイ・サウスウエスト)2020」で実施予定だったパネルディスカッションのバーチャル版。前編では3人のパネリストの最新の取り組みを紹介した。後編では、各氏へオンラインで寄せられた質問と、それへの回答を紹介する。

 「SXSW(South by South West:サウス バイ サウスウエスト)」は、音楽(Music)、映像(Movie)、テクノロジー(Interactive)の3ジャンルをテーマに掲げる世界最大の国際フェスティバルである。2020年は日本からのカンファレンススピーカーの数が過去最多になる予定だったが、新型コロナウイルス対策のため、残念ながら開催は中止になった。

 会場で開催予定だったパネルディスカッションをパナソニックが2020年4月9日、バーチャルパネルとして開催したのが「Robotics for Well-Being(幸福のためのロボット工学)」だ(写真1)。

写真1:sessionのイメージ写真

 登壇したパネリストは、パナソニック「Aug Lab」のリーダーを務める安藤 健 氏、デジタルメディアのパイオニア的起業家のAnn Greenberg(アン・グリーンバーグ)氏、スタンフォード大学の物理学博士でEarth Tech International CEOを務めるHarold E Puthoff(ハロルド・E・プソフ)氏の3人。パネル後半は、各氏とのQ&Aで進行した。

“幸せ”に対する考え方をアップデートする

 パナソニックで「Aug Lab」のリーダーを務める安藤 健 氏へは、同氏がテーマに掲げる「幸せを拡張する」ことやAug Labでのオープンイノベーションへの取り組みなどが質問された。

質問 :「Well-Being」について、目に見えない個々人の幸せをどうとらえ拡張していこうとしているのか?

安藤氏 :幸せの感じ方は、個人や文化によって異なるため共感する何かが必要だ。鍵になるのは「アップデート」だ。

 パナソニックはこれまで、テレビなどの家電製品を通じて社会や生活より良くしようとしてきた。現在は、次のアプローチに取り組もうとしている。新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で、家庭での過ごし方が変わろうとしている。そうしたことも含め、幸せに対する考え方をアップデートしていきたい(写真2)。

写真2:Aug Labが目指すウェルビーイングのあり方

質問 :Aug Labではオープンイノベーションに、どう取り組んでいるか

安藤氏 :現在の取り組みは高度な技術を扱っており、パナソニックのエンジニアだけで進めるのは難しい面もある。新しいものを作り出すうえでも、さまざまな人たちと協力するオープンイノベーションは不可欠だ。

 実際、あるプロジェクトではパナソニックでロボティクス関係のマテリアルエンジニアとして活躍する石川 善樹 氏が参加している。ほかにもアーティストや社会科学の専門家らともコラボレーションし、幸せの拡張を実現するために、さまざまなアプローチを採っている。

 ロボットの開発においても、従来は主に労力を減らして手助けするというアプローチが多かった。だが今後は、そこに社会的な視点が加わり、単純に便利というだけでなく生活を豊かにするといったことも含めて支援する方法を考えていくようになるのではないか。