• Talk
  • 公共

広島県、ひろしまサンドボックスのデータ活用を広める「データカタログサイト」を公開

野々下 裕子(ITジャーナリスト)
2020年10月26日

広島県は、地域課題の解消に向けた実証実験プロジェクト「ひろしまサンドボックス」で得られたデータをオープンソースソフトウェア(OSS)として公開する。そのデータ活用を広めるための「データカタログサイト」を2020年10月12日に立ち上げた。その発表会で開かれた、データ活用の流通に対する課題などに関するトークセッションの内容を紹介する。

 広島県は2018年5月、「ひろしまサンドボックス」をスタートさせた。県内をAI(人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)などのデジタル技術を使った地域課題を解消するための実証実験の場と提供するプロジェクトだ。2020年8月時点で1200社が参加する。

 ひろしまサンドボックスでは、広島県が公募する案件に対し、県内外の企業や大学、自治体らがコンソーシアムを組んで実証実験に取り組む。広島発の新たなソリューションを生み出す、共創(オープンイノベーション)のためのエコシステム構築が目標だ。

 それら実証実験で得られたデータおよびメタデータ(データの目録)を、オープンデータとして公開。その存在を知らしめるためデータカタログサイトを2020年10月12日に公開した。

写真1:データカタログサイトの画面例

 自治体の公共データをオープンソースとして随時公開する世界規模のデータポータルプラットフォーム「CKAN(Comprehensive Knowledge Archive Network}も利用するなど、データを幅広く公開していく。

データを安心・安全に利用できる適切なルールが必要

 地域とデータ流通をテーマにしたセッションで広島県知事の湯崎 英彦 氏はデータカタログサイトの狙いについて、「企業が共有できるデータも併せて公開し、要望があれば利用者と提供者をマッチングもする。データの流通や利活用を促進し、ニーズの把握や分析にもつなげたい」と意気込んだ。

写真2:トークセッション参加者。画面右上から時計回りに、広島県知事 湯崎 英彦 氏、世界経済フォーラム 第四次産業革命日本センター長 須賀 千鶴 氏、データ流通推進協会(DTA)代表理事 眞野 浩 氏、ソフトバンク代表取締役社長兼最高経営責任者 宮川 潤一 氏

 データ流通推進協会(DTA)代表理事の眞野 浩 氏は、「デジタル時代において、データは石油にも例えられるだけに、安心・安全に利用できるよう適切なルール作りが求められている。さらに血液にも例えられ、流れることが重要だ。そのための仕組み作りの必要性も高まっている」と指摘する。

 データ流通には“仲介役”も必要だ。そこでは「仲介に関わる組織は、データに対し中立であらねばならない。卸売市場や証券取引所のように場所は複数あってもいい。多すぎても混乱するが、利用する側から1つに見えれば良く、連携の仕組みは作っていける。一定の公正なルールを設け、闇市場を作らせないことが大事になる」(眞野氏)

写真3:膨大なデータを安心安全に流通させる取引市場のような機能が求められている。

 オープンデータはスマートシティとも密接に関わっている。日本が議長国を務めたG20では、スマートシティに取り組む国内外の都市が参加する「グローバル・スマートシティ・アライアンス」が設立された。自治体がデータやデジタル技術を利活用するための国際的なルールやガイドラインの策定などを進めている。

 同アライアンスの事務局を務める世界経済フォーラムで第四次産業革命日本センター長を務める須賀 千鶴 氏は、「アライアンスは20万都市が参加するネットワークに成長した。ひろしまサンドボックスは、特にアクティブな50都市のパイロット事業の1つだ。他都市からも注目されている」とする。