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製鉄所の生産計画立案を変革、日本製鉄×NSSOLが挑む熟練者業務のDX
数理最適化技術で製鋼工程の生産計画を数分で立案可能に
- 提供:
- 日鉄ソリューションズ
森田 幾太郎(以下、森田) :日本製鉄 デジタル改革推進部 主幹の森田 幾太郎です(写真3)。ハードウェアとソフトウェアの急速な進化も見逃せません。組み合わせ最適化問題の最大の課題は、解を得るための演算処理時間です。従来は気が遠くなるほどの時間を要しましたが、近年は計算機の高速化や、汎用ソフトウェアとアルゴリズムの高度化が相まって、製鋼工程の生産計画のような複雑な問題でも、数理最適化モデルの工夫次第で処理時間が現実的に利用できるレベルにまで短縮されました。
これらがうまく噛み合った結果、DX戦略が掲げる「生産計画DX」の一環として出鋼スケジューリングシステムのプロトタイプを2021年2月に稼働させることができました。以来、人手による計画を併用しながらシステムの改善を繰り返し、2023年3月に本番稼働させました。
──システム化で最も苦労したのは、どういった点でしょうか。
山本 政(以下、山本) :日鉄ソリューションズ(NSSOL) 技術本部 システム研究開発センターの山本 政です(写真4)。一言で言えば、熟練技術者が持つ暗黙知のモデル化・定量化です。生産計画の策定時、熟練技術者はいくつもの観点から計画の良し悪しを判断していますが、それらは感覚も含めた属人的な知見です。その判断基準のすべてを人手で書き出して明文化することは実際問題として不可能です。
稲田 利亀(以下、稲田) : NSSOLシステム研究開発センターの稲田 利亀です(写真5)。暗黙知のモデル化・定量化に向けては、アジャイル開発の手法を採り入れました。まずは熟練技術者への聞き取りで把握できた範囲で条件を設定し、それを基にシステムが作成した生産計画を熟練技術者に見てもらい、ダメな部分と、その理由を指摘してもらいながら、改良を短期間に繰り返すのです。当初は修正しても、別の部分でダメ出しが出るなどの連続でしたが、徐々に熟練技術者の計画に近い答えを出せるようになっていきました。
山本 :洗い出した条件の種類は70ほどです。当初は多くても30前後だと見込んでいたのですが。今も現場の声を参考に、必要に応じて条件は継続的に見直したり追加したりしています。
河井田 :プロトタイプの数値目標として、システムで作成した生産計画を、そのまま実際に利用できる割合をどれだけ引き上げられるかを定めました。使えない生産計画であれば従来通り熟練技術者が策定し直します。社内で「90日DX」と呼ぶ3カ月単位で成果を確認しながら進めるやり方で、暗黙知の抽出を繰り返したことで精度を高め、約半年で9割台にまで利用率を高められました。
森田 :現場への実利用率を高めるためには、システムのレスポンスが速いことも重要です。そのために採った策の1つに「組み合わせ爆発をどう抑えるか」というものがあります。
組み合わせ最適化問題では、解となる選択肢の組み合わせが指数関数的に増加します。それに伴って処理時間も指数関数的に増加するため、選択肢をいかに絞るかがポイントです。有効だったのは、業務知見に基づき最終的に同じ鍋にまとまりそうなスラブのグループを事前に作ることです。どんなスラブが同じグループになるのかの予測は、まさに業務ノウハウの塊ですが、グループという“縛り”を加えることで組み合わせの数を抜本的に減らせるようになったのです。