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AI駆動国家の鍵は“アジャイル・ガバナンス”、 『デジタル・ニッポン2026』が提言
「AIBB TOKYO 2026春」のパネルディスカッションより
マイナンバーカードはデジタル社会での信頼のための基盤
黒田 :デジタル社会の信頼の基盤(ベースレジストリ)として、ホワイトペーパーではマイナンバーカードの活用が議論されています。
平井 :マイナンバーカードの本質について、世間ではまだ誤解が多いと感じています。国が国民に“義務”を課しているという文脈で語られがちですが、本来の正しい理解は逆です。マイナンバーカードは「デジタル社会において、国民が安全・確実にデータにアクセスし、自分が自分であることを国に証明してもらう権利(アクセス権)」を国が国民に対して保証するためのインフラなのです。
インターネットの世界は非常に危険です。アメリカの社会保障番号(SSN)のような単なる「番号」だけの管理では、なりすましやID盗難による被害が年間膨大に発生しています。だからこそ、番号だけでなく、本人がカードのICチップを使って法的個人認証を行う仕組みが必要なのです。
私たちが目指しているのは、個人の大切な信頼基盤(アイデンティティ)を、米Metaや米Appleといった民間の巨大プラットフォーマーだけに委ねるのではなく、国が公的な安心の拠り所として担保することです。この基盤があって初めて、安全なデータ流通やアジャイルな社会実装が可能になります。
最終的な“責任”を負えるのは人間だけ
黒田 :これからのAI共生社会を生きる私たちにとって、最も大切な心構えはなんでしょうか。
平井 :AIシステムは驚異的な記憶力を持っていますが、人間の素晴らしい能力の1つは“忘れる能力”です。人間は嫌なことや失敗を時間の経過とともに忘れ、都合よく記憶を上書きすることで前を向いて生きていけます。AIシステムには、これができません。一度学習したデータは、意図的に消去プロセスを踏まない限り残り続けます。
またAIシステムは、使う人の“鏡(バーティカルAI)”になります。くだらない会話を好む人には、そのような出力を返し、高度な思考を持つ人には、そのレベルに合わせます。だからこそ、私たち人間がリベラルアーツ(教養)を学び、歴史や哲学、人文科学を通じて「問いを立てる力」を養い続けなければ、人間側の能力が退化してしまいます。
法律やガイドラインの整備においても「ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-loop:人間の関与)」あるいは「ヒューマン・オーバー・ザ・ループ」の原則を死守しなければなりません。
AIシステムに人格権を認めたり、意思決定の全権を委ねてエージェント同士の取引や騙し合いが暴走したりすれば、社会は崩壊します。AIシステムがどれほど賢くなろうとも、最終的な“責任”を負えるのは人間だけです(図1)。
津田 :自動化できる部分はAIシステムに任せつつ、私たちはリアルの価値、人間同士のつながりに立ち返る必要がありますね。
平井 :そうです。結局のところ、どんなにデジタル化が進んでも、夜に居酒屋で仲間と膝を突き合わせてお酒を飲むような“アナログな時間”の価値が変わることはありません。そこから新しいアイデアや人間関係が生まれるのです。AIシステムを徹底的に使い倒しながら、人間にしかできない豊かなリアルを楽しんでいきましょう。
